ベストセラー『オシムの言葉』に書かれている旧ユーゴまたは旧ユーゴ代表の崩壊を
映像として見れる貴重なドキュメンタリー。
まさに東欧のブラジルと呼ばれた90年代の旧ユーゴのスター達の心境が吐露されている。
ボバン、プロシネツキ、ミヤトビッチ、ミハイロビッチ、サビチェビッチなど選手とその家族が、
そしてイビチャ・オシムがインタビューで当時を振り返る。
人々は民族主義による憎しみに凝り固まり選手、監督にも凄まじいプレッシャーをかけられるが、
さすがだと思わせるのがその重圧に屈しない一流選手達のメンタルの強さだ。
他国と違いサッカーに集中出来ないであろう環境でも、常に前を向く強靭な心は、技術だけでは
超一流になれないサッカーの一端を見る事が出来る。
ただこの作品は互いに国家にブーイングを浴びせ憎しみの言葉をあらわにして衝突するサポーターの姿。
旧ユーゴ代表メンバーのインタビューなどがメインでありオシムがメインの映画ではない。
時期的には2001年頃制作されたものと思われ「オシムの涙」という副題は日本人向けに
後付けされたものであり誤解を招くと思う。なので星は一つマイナス。
しかし内容は素晴らしく80年代後半から90年代のサッカーに詳しい方なら当時のスタープレイヤーの
生の姿を感じられ楽しめると思う。
国歌斉唱時に自国サポーターから大ブーイングを浴び引きつった笑いを見せるピクシーも印象的だが、
個人的には代表時代はオシムに反抗していたサビチェビッチがオーストリアリーグに移籍して
オシム率いるチーム(グラーツ)と対戦する試合前、満面の笑みでオシムを訪れ歓談する様子は
オシムの大きな包容力と壮絶な時代を共にした絆を感じるシーンで印象的。