弁証法というとヘーゲルとマルクスの名、正・反・合の三段階、止揚、アンチテーゼといった用語を思い浮かべる人が多いと思うが、自身がヘーゲル研究家である中埜氏は、弁証法は決してヘーゲルやマルクスの専売特許ではないと主張する。まず言葉の多義性に立ち返り、「弁証法」の語源であるギリシャ語の「ディアレクティケー・テクネー(問答術)」を原点とし、弁証法の本質をI.言葉の問題、II.対話と弁証法の構造、III.弁証法の精神の三節を設けて整理する。そして哲学史において弁証法が現実にどのように現れ、展開されてきたのかを解説する。まずギリシャ哲学におけるソクラテス以前のあり方。そしてプラトンとアリストテレスにとっての弁証法。そしてそのヨーロッパ中世への影響。近代におけるカントとフィヒテ。そしていよいよヘーゲル哲学とそのアンチテーゼたるマルクス・エンゲルスとキルケゴールが俎上にのせられ、検討は弁証法神学、反弁証法にまで多岐に渡る。