聞きなれない「耐震強度」の用語が日本列島に降り注ぎ、後から後から各地での同様のマンションやホテルなどの耐震強度偽装と建築にかかわる大量の疑惑の報告が続いた日から、私たちは何かを学んだのだろうか?
マスコミにより、特異な個性に仕上げられた設計士と何人かの会社社長。私生活やその生い立ちが、あたかも事件の重要なキーワードであるかのマスコミによるミスリード。
立法府の証人喚問の後に残ったものは、別件での何人かの裁判と倒産により消える幾つかの会社。急激に忘れ去るマスコミと国民。
本書は、良好な住環境とまちづくり。都市計画法と建築基準法、公共事業の在り方に長年警告を発してきた五十嵐敬喜の最新作である。
五十嵐の筆は、訪ね歩いた各地の建築紛争の現場、そして当事者とかかわった裁判の経験を糧に、戦後の住宅政策、土地利用をめぐる経済と法の変遷を多様な資料により跡付ける。
そして、五十嵐の標的は裁判官にも到達する。
マスコミにより作り上げられた「特異な個性の設計士と会社社長」の物語から、新たに市民による街作りの物語の必要性を示唆している。