冒頭に提示される「部分の建築」「あいだの建築」といった言葉に心惹かれつつも、建築の門外漢である私には、それらによって喚起されるイメージの引き出しが多くない。やや苦しみながら、しかし、骨格のしっかりした読みやすい文章にうながされて読み進んだ。
そして、「二人ということ」という節で、なにかが腑に落ちた。
"僕は、群衆でもなく個人でもなく「二人」というところから自分の建築を始めようと思う。"(70ページ)
ここでの「二人」は、決して閉じられた人間関係の単位ではない。著者は、そこに生まれる多様な関係性が重要であり、建築はさまざまな関係性が生まれるための「場」をつくるべきだと言う。
そう、脱近代が唱えられて久しいが、いまだに私たちは「個人」と「群衆=マス」という2つの位相の間で引き裂かれている。
私にとってもリアルなその問題に、建築というフィールドで挑んでゆく姿に引き込まれ、疎いはずの建築コンセプトの記述を、先を待ちきれずに読み進んだ。
語り口は穏やかだが、音楽、文学、茶道まで、そのときに必要と思うものを感じるままに摂取してゆく著者の感性の瑞々しさに煽り立てられる刺激的な書。建築畑の人たちだけに独占させるには惜しい。