今の学校建築が本当に教育に適合しているのだろうか?こんな問いを発すること無く、私たちは教育を受け、そして教育について語っています。本書で紹介される福井市立至民中学校は、従来の学校建築のスタンダードを斬新に乗り越え、そして教師と生徒とが共同で意見を出し合って設計されたものです。そこでは従来の教育とは違った教育のあり方が見出されています。
至民中学校の最大のポイントは異学年型教科センター方式です。1、2、3年生ごとに分けるのではなく、それぞれの学年を4〜5の「クラスター」にわけてクラスターごとに縦に統合します(至民中学校は4つ)。そしてそのクラスターを各教科、国語、英語、数学、理科、社会のフロアに教員ごと配分するのです。行事やHRは各クラスターごとに行い、教科の学習はそれぞれの教科スペースに移動して授業を受けます。従来の一つの教室に縛り付けられるスタイルとはまったく違い、「一つの学校の中に4つの小さな学校をつくる」この取り組みは十分斬新であると言えるでしょう。その効果のほどは本書を読んでのお楽しみですが、生徒の学ぶ意欲に枷をはめないためには、学校建築のあり方も重要であることを思い知らされます。
ただし、建物だけが新しければいいわけではありません。教師の教え方も従来の一方的な詰め込みではなく、生徒の自主性を引き出すようなものに移行していかなければ、新しい学校建築のスタイルを生かすことはできないのです。また、それは生徒やその保護者らの参加、合意が欠かせません。至民中学校のすごいところは、これら全ての人々を巻き込んで、ちゃんと合意形成をしているところです。このプロセスが何より大きいのではないかと思います。現在の行き詰まった教育に変わる、新しい教育の姿が垣間見えるそんな本です。