本書はドーキンスの著作の中でも群を抜いて難しい。他の著作と同じ感覚で読み始めると、その専門性の高さに面食らってしまいます。数学モデルこそ使われていませんが、内容は専門書レベルと言っていいと思います。著者自身まえがきで断っている通り、
「…おもに想定している読者は、…進化生物学者、動物行動学者や社会生物学者、生態学者、…哲学者や人文科学者であり、…これら全学問分野の大学院生や学生たちを含んでいる。…読者が進化生物学とその学術用語についての専門的知識をもっていることを前提にしている。(p5)」
私は大学教養レベルの生物学は一応こなしていたし、「利己的な遺伝子」も読んでいたけど、初めて本書を読んだときには何が書いてあるのかほとんど理解できず、途中で放棄してしまいました。後に進化生物学関連の書籍を読み漁り、再度チャレンジしてようやく読み通すことができました。
内容は最初の10章分(約360ページ)が言わば“前置き”で、「利己的な遺伝子」に寄せられた批判に対する反論のため、より詳細で高度な議論を展開している、といったところ。残りの4章分(約130ページ)が主題となる「延長された表現型」に関する議論で、要は遺伝子の表現型というものはその“個体”には限定されず、その外部へも拡張されうるということです。
「利己的な遺伝子」の第二版以降には、この「延長された表現型」のエッセンス部分が新たな章として追加収録されているので、そちらを読んでおけば一般読者としては十分でしょう。学者でもない者があえて本書に手を出す必要はないと思います。もちろん読めばとても勉強になるし、他の進化生物学関連の本を読むときに、辞書的に参照するという使い方もあると思います。しかし、とにかく難しいということだけ…。ちなみに訳は悪くありません。