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廃疾かかえて (新潮文庫)
 
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廃疾かかえて (新潮文庫) [文庫]

西村 賢太
5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

怪し気な女ともだちに多額の金を貸していた同棲相手の秋恵。その人の好さに暴力的な衝動をつのらせていく、身勝手な男・北町貫多を描く表題作。大正期の無頼派作家・藤澤清造の歿後弟子を任ずる金欠の貫多が稀覯雑誌を求め、同行を渋る女と地方へ買い出しに行く「瘡瘢旅行」他、敗残意識と狂的な自己愛に翻弄される男の歪んだ殉情を描く、全く新しい私小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

西村 賢太
1967(昭和42)年東京都生れ。中卒。2007(平成19)年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞、’11年「苦役列車」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 177ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/04)
  • ISBN-10: 4101312826
  • ISBN-13: 978-4101312828
  • 発売日: 2011/04
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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サドの『美徳の不幸』を思い出してしまう。自分の好きな作家のことしか頭にない主人公の貫多や、つつましい秋恵にすべておごらせて平気な久美子など、図々しい人間が幅をきかせている。貫多の女である誠実で献身的な秋恵が不幸になる。これは世の中の縮図である。まともな読者なら秋恵に同情するだろう(貫多から青タンを顔に吐きかけられた秋恵に同情しない者がいるだろうか)。作者は秋恵に対する悪行をすべて書き、自分を醜く描くことによって、最も献身的だったひとりの女性に贖罪を求めているようにも見える。内容は女性に対するサディズムだが、これが虚構ではなく、自己のすべてをさらけだした私小説であるところがマゾヒズム的である。世の中の作家の多くは、異性にもてようとして、良い人だと思われようとして書いている。島田雅彦などは村上龍との対談で「もてない作家は駄目だ」とまで言い切っていた。そのジンクスを打ち破り、男の誰もが持っている「もてたい」という気持ちを捨てて、あえてその逆を突っ走った方法、すべてを暴露し自己評価を傷つける潔い犠牲的精神、そのマゾヒズムが、読者の心をとらえるのだ。
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西村私小説の代表作である所謂「秋恵もの」の三篇を収録。
同棲相手の女に、その女友達に好いように「たかられて」いるとして、ねちねちと難癖をつけては女を責め立て、最後は手痛い目に合わせ嗜虐の快を貪ろうとの夢想に浸る男を描く『廃疾かかえて』、激しいDVの後の不穏な空気を湛えた二人の、古書を求めての一見穏やかだが破局への萌芽を抱えての小旅行の様を描く『瘡瘢旅行』、危篤の祖母の居る実家へ帰省した女との、すれ違う思いの果てに激しい暴言の応酬へと転じる様を描く『膿汁の流れ』。
いずれも、同棲する女との壮絶なバトルの様が描かれており、その惚れ惚れするほど流暢かつ、的確に相手の急所を突く悪罵の連打が、読んでいて不思議な陶酔感へと導いてくれる。
これを喩えるなら、エドワード・オールビーの『ヴァージニアウルフなんか怖くない』や、チェホフの『熊』だろうか?
どちらも男女間の激しい口論の様を描いたセリフ劇だが、案外その辺りに著者の進むべき道がありはしないかと、思わせられた(H23.10.1)。
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7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By umemomosakura トップ1000レビュアー
3編からなる短編集。

藤澤清造に入れあげ、同居女性にわがままの限りをつくし、経済的に全然ダメで、従って貧乏で、自虐的なのに、どうしようもなく自分好き。
そんな相変わらずの作者による、細部がこれでもかと濃密に描かれた、相変わらずのワンパターン私小説。
でもやはり面白い。

何でだろうと思っていたら、巻末の解説で酒井順子氏がうまいこと言ってます。
「我々が(中略)幼児の頃からさんざ言われてきた教えを、貫多は気持ちよく無視します。貫多は私たちの変わりに暴力をふるい、性的欲求を開放し、カロリーの過剰摂取をしてるのではないかと思えてきて、だからこそ私は、負のヒーロー・貫多に対して一抹の痛快感を覚える」

この作者が癖になる理由が、ちょっと分かった気がしました。
しかし作者のダメっぷりが強調されればされるほど、ヒロイン秋恵の人のよさが健気で可愛らしく、彼女は今どこでどうしているのだろうと気になってしょうがないです。
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