非常に渋い連作短編小説でした。
道警の敏腕刑事だった仙道は、ある事件で深い心の傷を負ってしまう。PTSDを癒すため、休職中の仙道のもとに、さまざまな事件が持ち込まれる。
休職中の刑事という設定が、仙道の行動に大きく制約を課しているのですが、このあたりがまた、読みどころとなっているのです。情報を得ようと現地の警察署へ足を運ぶのですが、そこで興味津々に病気のことを聞かれたり、同情をこめた目でみられたり。当然のことながら「休職中の部外者が、なんで首を突っ込んでくるんだ」とあからさまに不快感をしめされることもあります。
相談を持ち込む人たちは、皆、警察の捜査に疑問を持ったり、おざなりな対応に不満をもったりしています。組織の力で解決できなかった事件を、仙道が快刀乱麻のごとく解決できるはずもないのですが、このあたりも、うまくバランスをとっています。さりげなく仙道の言葉をきっかけに事件が方向を変えていく、ヒントが解決の端緒となる、など、佐々木小説のリアリティを保って書かれているところは、感心します。
しかし、私にはちょっと渋すぎました。どうも、こういうトレンチコートに哀愁の後姿が似合う作品は苦手意識が強くて。
またミステリを期待して読んだことも肩すかしでした。刑事が主人公の普通の小説としてお読みください。そうすれば表題作などは、なかなかの感動の秀作です。(いつになったら真犯人がでてくるんだろうと、トンチンカンなことを考えて最後にガックリしたのは秘密です)
また全体に暗いトーンでしたね。事件も暗いし、終わり方も暗い。最後に仙道自身が立ち直り始めた兆しが見え、そこは救いになりました。