鮫島有美子が人気絶頂を迎えていた1986年7月22日と23日に、日野市民会館大ホールで収録したものです。音楽の価値は不変でしょうし、30代前半という若き日の鮫島有美子の伸びやかなソプラノを聴くことができますので、この廉価盤は声楽ファンにとって嬉しい企画ですし配慮だと思いました。
田中良和指揮の東京都交響楽団の伴奏がついているわけですから豪華な編成での収録です。合唱は全日本コンクールで何回も金賞を受賞している栗山文昭が指導する合唱団OMPですので、それもこのCDの価値を高めている要因の一つでしょう。
アレンジは南安雄です。気をてらうことのないオーソドックスで聴きやすい編曲で好感がもてます。
日本歌曲やドイツ・リートを得意とする彼女ですから、全曲とも日本語の美しい響きをもって歌われています。
「埴生の宿」「アニー・ローリー」「久しき昔」「ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)」「故郷の空」「グリーンスリーヴス」「春の日の花と輝く」「庭の千草」「ロッホ・ローモンド」と日本人の誰もが幼い頃に聴いたり歌ったりしたことのある名曲が収められています。
ビブラートの少ない明瞭な日本語で歌われていることもあり、違和感なく聴くことができました。歌心は十分に感じますし、それでいて感情過多ではないので、鮫島の品の良さを感じる歌唱ぶりでした。
いわゆるオペラ歌手が歌った曲ではなく、ドイツ・リートを含む歌曲を主なレパートリーとしているその特徴と個性が生きた企画ですし、選曲だと思っています。
懐かしい遠く過ぎ去った日々を思い返しながらじっくりと聴くのもまた一興かと思います。