本書は、パーリ仏典の最新研究成果も含む豊富な仏教情報を8つの視点(=座標軸)でコンパクトに整理した斬新な「仏教ガイド」である。
副題は<著者と共に探す読者自身の「わたしの仏教」>という意味であるが、その意図は“現代日本において、釈尊の精神を生かしながら修行者として生きるのは、出家者(僧侶)になるのでも特定の宗教団体の在家信者になるのでもなく(i.e. 後戻り不可能な一歩前進ではなく)、人間としてまっとうで穏やかで幸せに生きられる道(i.e. 後戻り可能な半歩先)を踏み出そうとする人の修行道を模索してみたいと思います。”(p.5)ということである。
その半歩先とは“釈尊の教えに共感(=聞)したら、自分でよく考え(=思)てから、実践してみる(=修)という「聞・思・修」を大事にする”こと(p.304)から生まれる“多様な価値観をそのまま認め合い、主義主張にこだわるのをやめ、実効性のあることをやろう”(p.308)という意味である。
このような著者の狙いは、カリフォルニアのリトリートに集まった約60人の芸術家に対して、“アメリカの仏教は、アメリカ人たちによって創造されるべきであることを強調し、芸術家たちに、未来の仏教のヴィジョンを描くことを依頼した”ティク・ナット・ハン師の「思い」と一致する。
初詣が習慣化したのはそれほど古い時代ではなく明治時代中期のこととされている。同様に、現代人にとって実効性をもたらす「半歩先の仏教」が新しい習慣となるのは予想外に早く訪れるかも知れない。