『座布団』のシリーズは、要から見た初助師匠の物語だ。既読の読者は初助の物語を期待してCDを聞くだろうが、このCDでは初助の内面についてはさわりだけ。しかし、聞いてびっくり。『座布団』は『座布団』でひとつのしっかりしたストーリーだということがよくわかった。
それは山口勝平さんの力によるところが大きい。山口さんは上手い。もう、びっくりするほど上手い。落語家の話なので、落語の場面が出てくるんだけれど、要の才気が一目瞭然というか、聞いて納得できるのだ。初助師匠は三木さん。CD化の話を聞いたときから、三木さん以外には考えられないと思ったが、予想にたがわず、ほんの一言で場の雰囲気をさらってしまう。初助がそこにいる。落語家としてはもう少し軽妙洒脱な感じでもいいかなと思ったが、過去に遡ったときを思っての落ち着きかも。要の兄弟子で恋人の寒也は神谷さん。優しいけれど浮気者。声はいいけれど落語の才能はない。いいヤツだけどちょっとダメな男、そういう役がとてもよく似合っていた。しかも攻守逆転だ。三木さんのように癖のある役もどんどん演じてもらえるのではないかと聞いていて思った。楠大典さんは、やがて初助にのめりこんでいく香田をさわやかに演じていた。この後が見せ場なのだ。
要がかっとなると突っ走る性格で、おだんの宴会で窮地に陥る様子や、師匠からいろんなことを学ぶ様子が生き生きと描かれる反面、初助師匠の妖艶な場面が少ないのが残念だった。これだけでは物足りない。もっと三木さんの初助師匠を聞きたい。ぜひ続編を。
どどいつを歌っている場面があって三者三様、とても楽しかった。「三千世界の…」は思わぬ余禄(笑)。