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広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)
 
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広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書) [新書]

服部 龍二
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ対大使など要職を歴任した広田弘毅。満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。しかし二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。

内容(「BOOK」データベースより)

日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ大使など要職を歴任した広田弘毅。満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。しかし、二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。

登録情報

  • 新書: 296ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2008/06)
  • ISBN-10: 4121019512
  • ISBN-13: 978-4121019516
  • 発売日: 2008/06
  • 商品の寸法: 17.2 x 11 x 0.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
 戦前に外相、首相を務め、東京裁判では文官として唯一人絞首刑となった広田弘毅の生涯は、城山三郎の「落日燃ゆ」で、高潔な人、裁判で黙して語らなかった人、家族を大事にした人として高く評価され、TVドラマにもなっている。本書は、日本外交史専攻の著者が、公文書等一次資料に当り各文献には検証を加えながら描いた広田の実像であり、客観的で抑制の効いた筆からは、城山の小説広田像とはまた違った貌が現れる。
 本書によると、若いころの広田は政談好きの反主流派(中国派)の職業外交官としてまずまずの仕事をしているが、閣僚としては意外に凡庸である。軍部の横暴への抵抗が難しい時代、外交上の難問が山積みの時代であったとしても、首相としては「軍部大臣現役武官制」の復活を安易に認め、近衛文麿内閣の外相としては「国民政府を対手とせず」声明やなし崩し的な日中戦線拡大への対処は拙いし、重臣会議メンバーとしての日米開戦や戦局悪化への対応も手ぬるい。広田には意思の弱いところがあり周りの人の意見に流されやすく、外務省の後輩からは辞表を出され、近衛流ポピュリィズム政治に染まって冷静な外交判断ができない。
 ただ戦後の東京裁判は気の毒であった。「平和に対する罪」、「人道に対する罪」という事後法によって起訴され、判決は6対5の僅差で死刑となる。その前には近衛の自殺と松岡洋右の病死もあり、文官として唯一人責を負わされた面もあろうし、法廷で声高に自己弁護しなかったのは、他の戦犯容疑者達の恫喝や保身行為にいやな思いを持ったからではなかろうか。
 広田の信条は「自ら計らわず」、最期の言葉は「身を殺して仁をなす」(論語)であり、個人的には人間的魅力を感じるが、難局にあっての一国の指導者としては胆力に欠けており、国民にとっても不幸なことであった。
このレビューは参考になりましたか?
16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 2-much
形式:新書
広田弘毅と言えば小説『落日燃ゆ』の残像が強い。
自分も『落日燃ゆ』の清冽で透明な人物像に違和感を覚えながら、
大きな影響を受けていたことは間違いない。

その幻想を、現存する資料から再点検しているのが本書。
本書のおかげで、透明で実体の無い影絵が
ようやく血肉を持った人間として見えてきたような気がする。

だが、結んだその人間像は予想外に平凡。
彼は優れた為政者でも傑出した外交官でもなく、
現代にもいるようなごく普通の政治家だった。

底の無い善人ではなく、だからと言って倫理に反する人でもない。
自ら道を切り拓いていく先駆者としては部下に仕事を流しすぎる。
後進を育て導く指導者にしては情熱に欠ける。

穏健な平和主義者であることは間違いないが、
裏を返せば優しすぎて自分の意思を通しきれないとも言える。
ややもすると壁に当たったときに情熱をなくし、
その場の流れに巻かれてしまう弱さもある。

確かに“その時”に自分の意思を貫くことは難しい。
けれど、それでもだ。

だからこそ、運命の分岐点で熱意を失い、
大勢に迎合してしまうその姿がもどかしく哀しい。

本当は、この人を憐れんではいけない。
次の戦争を起こさないためにも、
公人・広田弘毅の執政は過去の失敗として断ずるべきだ。
しかし、この人が極刑に値するほどの罪を犯したとは思えない。
私人としてならば、俺はやはりその死を悼みたいと感じている。

感想はまとまらないが、『落日燃ゆ』に好感でも反感でも
何らかの感情を持ったなら読むべき一冊です。
このレビューは参考になりましたか?
40 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By picander トップ500レビュアー
形式:新書
通説を否定し、広田が玄洋社の正式な一員であったとして本書は始まる。国士であることと合理主義的な外交官であることの二面性は、広田の外交に奥行きを与えるどころか、軸の定まらない広田の揺れを助長することとなる。「その姿は中国と欧米の間でよろめく日本を象徴していた」。
若い頃から大陸に憧れ日中提携を模索した広田が、日中開戦を避けられず、対中強硬派を説得できず、南京事件を黙認し、最終的には中国判事の賛成で(6対5で賛成が上回った)絞首刑とされる。
この逆説に満ちた広田の人生は、「軍部の方針に抵抗し続けた高潔な平和主義者が理不尽な判決により葬られた」とする城山三郎が描いたような悲劇とは言い切れない。本書が示すのは、対中強硬路線を叫ぶ陸軍と世論、世論頼みの近衛に、毅然と立ち向かったのではなく「消極的に賛成を繰り返した」結果、外交の選択肢を急速に狭めていった広田の弱さである。
南京事件における「かれの不作為は、犯罪的な過失」とした東京裁判の判定は、勝者の一方的な裁きとして無視できるものではない。国運を左右する決断は、世論とも軍部とも距離を置き、指導者の国家観に基づいてなされなければならなかったが、広田が盧溝橋事件以降、軍部や世論を押さえ込もうとした形跡は見当たらない。
広田は(東條ほか多くの軍人も)、人格高潔であったことは間違いない。広田の外務省内での人望の厚さも本書では示されている。ただ、国家の指導者ではなかった。チャーチル、スターリンといった高潔や倫理といった観念とは別の次元にいるリーダーと対峙するには、日本にあまりにタレントが足りなかったことが最大の悲劇であった。広田の消極性は、今日に到るまで日中関係の桎梏となっていることは間違いない。また、本書が示す幣原と広田の距離感は、昭和外交史の重要な視点であろう。城山三郎とは別の意味で、本書からは著者の広田、また昭和期の外政家に対する深い敬意を読み取ることができる。
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