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幽霊 (岩波文庫)
 
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幽霊 (岩波文庫) [文庫]

イプセン , 原 千代海
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

愛のない結婚を否定しつつも,因襲的な観念に縛られて放縦な夫のもとに留まり,家名を守るため偽善に終始してきたアルヴィング夫人.夫の偽りの名誉を讃える記念式典を前に,可愛い一人息子のオスヴァルも帰ってくるが,因襲の幽霊がふたたび夫人の前にあらわれる.ギリシャ悲劇に比せられるべきイプセンの傑作.

登録情報

  • 文庫: 163ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1996/6/17)
  • ISBN-10: 4003275047
  • ISBN-13: 978-4003275047
  • 発売日: 1996/6/17
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 215,092位 (本のベストセラーを見る)
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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 因襲的な観念に囚われて放縦な夫のもとに留まり、夫亡き後も家名を守るために偽善に終始してきたアルヴィング夫人は、小間使いレギーナと二人暮し。そこへ病を患ってパリから息子オスヴァルが帰ってくる。間もなくアルヴィング夫人は、因縁の幽霊の再来を目の当たりにすることとなる。彼女は言う。

「私達には取りついてるんですよ、父親や母親から遺伝したものが。…きっと国中に幽霊がいるんですわ。…それにみんな、私達、光をひどく怖がっていますものね。」
彼女は意を決して「幽霊」を追い払おうとするが…。 

 法や道徳、宗教への不敬、近親相姦や自由恋愛の擁護など、過激な側面を備えつつもこの作品が面白いのは、その「幽霊」の捉え方の巧さゆえである。物語に因縁的な色合いを添えるス!パイスとしての妙だけでなく、より広義で社会的な意味での「幽霊」の存在が実に面白い。更に、抜粋部のアルヴィング夫人の最後の言葉「私達はみんな光を怖がっている」と、ラストのオスヴァルの姿が見事にシンクロする。劇作家イプセンの構成力の上手さが光る伏線である。
 難を言えば、主人公の魅力がいまひとつであるが、自分自身「幽霊」との対決に挑んだイプセンらしい、社会派作品である。

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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By harryss
これは、「人形の家」のノラのような人が、もしもそのまま因習の檻の中に留まっていたら…というお話。
結果として、悲劇になります。
個人的には、「人形の家」よりこっちの方が好きです。より劇的な展開を自分としては味わいました。
「人形の家」でもそうでしたけど、ラスト近くで、カードがひっくり返るように登場人物が醜くなるのが読んでいて怖かったです。私はこの2作でそれが一番印象に残っています。
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By 三輪そーめん トップ500レビュアー VINE™ メンバー
イプセンの問題戯曲。

著者本人が「人形の家」との対比を狙ったのだと認めているのですが
この作品はもっと内容がハードで救いが無い。
嘘を嘘で塗り固めた人生を送ってきたアルヴィング夫人が
最後になって総てを失う話なのですが
一番身につまされるのは夫人の一人息子のオスヴァルの悲しさだ。
最初から間違った婚姻から生まれた彼には先天性の病があって
いつかは「赤ん坊のように」ならざるを得ない。
その事が最後になって判明する。
母親に「愛しているなら僕を助けて(殺して)」と頼む息子。
病を自覚して息子の絶望に際して慰めていた母親も
彼が発病した、うわ言のように「太陽が欲しい」とつぶやく息子を見て
「たまらない!たまらない!もうごめんよ!」
と、嫌な現実から目を背けるように息子を殺す毒を探そうとする。
それは、彼女が忌み嫌い、侮蔑していた利己的な周囲の人間たちと同じ反応。
うわべは繕った、あるいは無自覚な道徳的な感情も
恐ろしい現実の前ではあっさりと壊され、醜い利己的な感情が表れる。
オスヴァルが「陰惨で憂鬱な故郷」に帰ってきたが故に暴かれる人々の闇。
そうしてみると、オズヴァルは母親にとっての希望―太陽のような―
であると同時に、物事をあからさまに照らす太陽のような存在だったのか。

生んでくれと頼んだ覚えはありませんよ。
それに、あなたがくれた命はいったい、どんな命です?
こんなものはほしくない!返しますよ!

総ての虚偽を暴き出す存在だったオスヴァルには太陽はなかった。
真実を明かされたあと、ずっと赤子のままでいるのは救いなのか。

あらゆる悲劇の中で、もっとも救いようの無い悲劇。
登場人物は感情移入しにくい人ばかりですが、それも救いに思えてくる。

「人形の家」よりも深く、重い、です。
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