2008年3月19日,アーサー・C・クラークが亡くなったとのニュースを聞きました。ハインライン,アシモフ,レム・・・。時代の移りかわりを感じます。これを機会に,冒頭が書き改められたという新訳文庫版と,以前に読んだハヤカワ文庫版を読み比べてみました。前に読んだのは30年前の中学生時代。その時は頭を殴られたような衝撃を受けたのですが,今読むとどんな感じだろうかと少し不安を感じながらの再読でした。
話題の冒頭部については,確かに今となっては新訳版の方がすっきり入っていけるとは思います。とはいえ,あくまでも小説なのだから旧訳版が全然しっくり来ないかというとそれほどでもないという印象でした。小説が史実とちがうって批判する人はいないでしょうし,文学的効果もそれほど違うとは思えない。私見では好みの問題程度の違いだと思いました。
訳文は,さすがに新訳の方がなめらかだと感じました。人称代名詞は少ないし,使わない言い回しもない。ではハヤカワの福島訳がそんなに違和感があるかと言われるとそうでもない。約40年前の訳だということを考えると,かえってその先進性に驚くほど。
全体の読後感ですが,心配は杞憂でした。非常に面白く読めて,改めて感動。ガジェットの目新しさなどではなく,本質が名作なのだと思いました。若い頃は,新しい人類の未来を思って高揚感を覚えましたが,今回は袋小路の上帝(オーバーロード)に対するちょっとしんみりした共感が強かったのは,自分が年齢を重ねたからでしょうか。
これから読むのであれば新訳でしょう。でも,私のように福島訳で育って「上帝の名はカレルレン」(新訳では「オーヴァーロード」,「カレラン」と表記)と覚えている人にとっては,ハヤカワ文庫版もまだまだ現役だと思います。