海外作家のブラック・ジョークは怖い。その皮肉は、容赦ない知性の刃と耐え難い毒をはらんでいる。しかも、海外ものとはわかっていながら、今、眼前にある日本社会を痛烈に皮肉られているような気さえしてくる。
貧困と人種差別ゆえにどこまでもノーテンキでからっぽな囚人が一夜にして得る大衆人気。規則に厳格であっても法には無知な官僚。冤罪を成り上がりの機会と焦る女性弁護人、たばこ会社、政治家、死刑反対、喫煙反対論者と、そのまた反対論者によるドタバタ。
一方、子育ての親のためにオフィスが全面開放され子供があたりかまわず走り回っているという情景。男子トイレに迷い込んだ女の子に対する性犯罪をまつりあげられる悲運。子供嫌いが小児性愛倒錯の状況証拠とされる皮肉。行政の矛盾をほじくり返してうさを晴らしている高学歴プチブルの人生。批判好きで常に主流に背を向けていた性格がゆえに向けられる悪意に満ちた復讐と排除のうねり。
この対照を軸に展開する本書を読み進むうちに、始めの笑いが、やがてこわばっていく。
ブラックものマニアにとっても、赤いマークがいくつも並ぶ超激辛だろう。