子供の頃に読んだジュール・ベルヌの小説(少年少女版)にはエッチングで描かれたような繊細な挿絵がほどこされていた。その挿絵のような幻想的で魅惑的な世界がこのカレル・ゼマンの作品には展開する(そういえば、子供の頃に良くTVの映画名場面集には必ず魚のような小型潜水艦の水中シーンが放映されていた)。全体的に縞模様を多用しエッチング的な絵柄のデザイン(モノクロ映像のためかそのときの本の挿絵とかなり重なるのだが)や繊細なアニメーションで描かれた船や建物と実写との融合、古風な音楽(チェンバロを使用した音楽)などファンタスティックな展開にはジュール・ベルヌが好きな人でなくてもうっとりとするだろう。
この映像は現在のCGと同じ効果をコンピュータを用いずに行ったと考えれば画期的な映像であることは間違いない。そう考えると、逆に今のCGを多用した映像が薄っぺらに感じてしまうのは私だけだろうか。
ストーリーは現代の核開発に通じる最終兵器の開発にかかわるジュール・ベルヌの予言的な原作の映像化だが、そこは映像ファンタジー性が重視されたものとなっている(原作自体がSF冒険小説なので、ファンタジー的なこの作品の創りでも違和感はない)。
ジュール・ベルヌをこよなく愛し、既存の映像表現にとらわれずにアニメーションや絵、実写を巧みに合成したカレル・ゼマンの夢の世界は今の世にも通用する素晴らしい世界だと思う。