本書の初版は、1964年に出されている。今から40年以上も前である。しかし、読み進めていくと、その主張が現在においても決して色あせていないことに驚かされる。
まず、序章で著者は、私たちの周りには人間の“とほうもない期待”を満足させるためにつくり出された「擬似イベント」が溢れ返っている、と述べる。その具体例として、第1章で「ニュースの取材からニュースの製造へ―擬似イベントの氾濫」、第2章で「英雄から有名人へ―人間的擬似イベントの氾濫」、そして第3章で「旅行者から観光者へ―失われた旅行術」などが取り上げられており、いずれも興味深い内容である。
著者は、冒頭で「幻影の正体を発見することは、世界の問題を解決することにはつながらないだろう。しかし、もしそれを発見しないならば、われわれの真の問題がなんであるかは、決して発見できないであろう」(p14)と述べている。私もまさにその通りであると思う。何はともあれ、まず知ることである。
本文は、具体例が多く、さらに字が細かいので少し読みづらい感はあるが、要所要所に散りばめられているエッセンスさえ読み取ることができれば、大変有用な著作である。とくに、現代社会において暴力的な力を持ったマス=メディアをとらえ直すには最適な著作だといえる。