著者のファンでデビュー作から欠かさず読んでいます。私が著者のファンなのは人間の奥深いプリミティブなところの描写がすばらしく、触れてほしくないところを微妙な距離感で目の前に差し出してくるところです。そのため読了後の喪失感や虚脱感が大きく、そこがまた快感で次作を待ちわびるというくりかえしでした。
しかし、ここ数作は何か哲学的な問いかけが中心のように感じ、読んでいて以前のような感覚を持てなくなってきていました。本作もその傾向がさらに激しくなっており、物語を楽しむというより何かスピリチュアルな哲学書を読んでいる気がしました。
2人の主人公におこる時空を超えた不思議な出来事を主軸に「死」とはなにか?私たちが生きているこの世界は実在するのか?ということを物語の中のできごとにからめて問いかけられます。ある意味非常に高尚でレベルの高い文学作品なのかもしれませんが、純粋に物語を楽しみたい私のような読者には向いていません。ここ数冊は全く同じ感想をもっているのですが、それでも毎回次作を期待しています。