この映画は本当に幻となった映画です。この機会を逃したら一生見ることが出来ないだろう、と意を決してこのDVDを買いました。164分の長尺なのでこれまた意を決して見たのですが、方々で散々な評価を受けている割には結構面白いです。同じ時期『月光仮面』の様に壮絶な興行的失敗をした映画は多いのに、なぜこの映画だけ取り沙汰され、そしてどうして封印されてしまったのでしょう。
犬をテーマの1つにしているのは『キタキツネ物語』の成功を追っている?(『黄金の犬』の後追いかもしれない)無理矢理な観のある時代劇とSF、国際的陰謀の合体は、類推するに1980年の日本2大ヒット作、『影武者』と『復活の日』から来ているものなのでは? この映画の最大の魅力は「走る」というシンプルな行為のエクスタシーにあるのですが、ひょっとしてそれすらも『炎のランナー』のいただきだという疑念があります。
ヒットする要素をごった煮的に盛り込んでも上手く昇華しないと破綻するのは当然なのですが、監督・原作・脚本の橋本忍に対するブレーキを誰もかけられなかったかのように見えます。東宝創立50周年記念映画という看板が、『八甲田山』の日本映画興行配収歴代1位という実績が、何かを狂わせてしまったのか。そもそもこの映画以上にどうしようもない邦画の大作はこの時期いっぱいあるのですが、角川的大量宣伝によって興行成績は維持されていた訳で、橋本プロ側が東宝にバックアップしてもらえるだけの何かが欠けていたものと思うのです。
カルトな興味で復活した今回のDVD化かも知れません(東宝は商魂たくましい!)が、なかなかどうして、出来映えは良いですよ。琵琶湖の四季の光景は絶品。主演の南條玲子は一般公募の素人ですが、でもその素の部分が私には新鮮に見えます。ランナーズハイのようなゆるい心地よさにひたることの出来る、一風変わった知られざる大作です。