★妻と些細なことでケンカをし家を出たスコット(アラン・カーティス)。バーで行きずりの女と知り合い、ショーを見た後、帰宅すると妻が死んでいた。妻殺しの容疑をかけられたスコットは、アリバイ立証のため犯行時刻に一緒にいた女を探す。という、ミステリーの1つの典型的パターンを踏襲した、推理小説趣向のサスペンス映画。原作はウィリアム・アイリッシュ。殺人現場を目撃して命を狙われたり、誰かに間違われたあげく、とんでもない、トラブル=(いざこざ)に巻き込まれる、等の物語は幾度となく製作されており、新味のある、珍しいジャンルとは言えない。だが、お話そのモノが定石通りであっても、観客の度肝を抜くようなうまい着想と優れたアイデアやトリック次第で、ぐんと面白くなる。しかし、本作の出来栄えは、残念ながら、たどたどしい、古風な仕上がり。テンポもゆるやかで、全体的に押しの強さが欠落している。事件の経緯をめぐる状況経過の捌き方も陳腐で、すこぶる単調。だからといって、全ての部分がダメと言うわけではない。スコットの秘書で、彼の無実を晴らすべく、証人のバーテンダーを執拗?に尾行したり、スコットの親友や懐疑的主義?な警部の協力を得ながら必死の捜査に奔走するキャロル(エラ・レインズ)の執念と迫真の活躍ぶりには、多少のスリルが味わえる。事件の重要なカギを握るドラマー(エリシャ・クック・Jr.)が絡む迫力描写もなかなかの見せ場。モダンな映像感覚も含めて、ロバート・シオドマク監督の演出手法もそれほど独りよがりに陥ることなく、それなりに頑張っている。 ひどく割り切れない、不満な点は残るが、案外楽しめると言った、程度の他愛ない、凡打の一篇である★。