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作品が書かれたのは、1942年。そんな古さはみじんも感じさせない。
妻殺しの罪で死刑判決を受けたヘンダースンは、犯行時刻、「幻の女」と一緒にいた。二人でバーに並び、タクシーに乗り、食事をした。劇場の最前列でショーも見た。その女の証言さえ得られれば、ヘンダースンの無罪は明らかだ。
しかし、ヘンダースンはその女の名前も容貌も思い出すことができなかった。そんなことには関心がなかったからだ。ただ、二人を目撃したという証人が全くいないのが不思議だった。そんな二人連れは見なかったと言うならまだ理解できる。ところが、関係者はなぜか皆、口をそろえて、ヘンダースンは一人でいた、と証言する。
ヘンダースンの言葉を始めて信用したのは、彼を死刑に追い込んだ刑事バージェスだった。バージェスのアドバイスで親友ロンバートの助けを求めるヘンダースン。その時点で、死刑執行までに残された時間は21日間しかなかった。
探偵役は一つ一つ小さな成功を積み重ねて真相に辿り着くものだと思っていた。しかし、この作品は違った。一つのヒントが成果につながろうとする瞬間、キーパーソンが事故死してしまうのだ。そのたびに、手がかりが一つ一つ空しく消えてゆく。果たして本当に事故死なのか? 死刑執行までに真相は明らかになるのか? そんなことを考えながら読み進むと、終盤一気の展開で真相が明らかになる。
死刑執行が刻々と近づく緊迫感とともにニューヨークの雰囲気が作品全体に溢れている。上質のミステリは上質の風俗小説であるのかもしれない。現在の読み手にとってこの結末は意外なものではないのかもしれないが、それを差し引いたとしてもこの作品が一級のミステリであることに間違いはない。
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