地球を探す旅の途上で遭遇した謎の種族トバールグとの真意を探り合う心理戦を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第387巻。本巻の執筆者は笑いの王者エーヴェルスと曲者健在クナイフェルです。シリーズの愛読者の方なら当然気づかれていると思いますが、担当作家の作風の違いで雰囲気やキャラクターの性格に微妙な変化を感じます。本書を例に取ると、ハルト人イホ・トロトがお馴染みの大音声で笑うと前半ではグッキーがテレキネシスで介入する大爆笑の大騒ぎになるのに後半では特に誰も慌てる事なく普通に静かな点や、種族トバールグが前半ではテラナーと一緒に笑いの発作に襲われる人間性を見せるのに、後半ではそもそも笑う事があるのだろうか?と思える程の人嫌いの無愛想な性格になっていたりする点です。以前に松谷先生があとがきで「長大なシリーズだから・・・・」と矛盾する所をよく指摘されておられましたが、私も長年読む内にそういった微妙な違いの部分も気にならなくなり作家毎に違う人物像を全部ひっくるめて愛せる様になりました。
『混沌を呼ぶ者』H.G.エーヴェルス著:謎の種族トバールグの宇宙船の大編隊に包囲された《ソル》のローダン一行は、SZ=1のみをアトランの指揮に任せて脱出させ、残りの中央本体とSZ=2で彼らの惑星クマントへの着陸を強いられる。本編では偵察に出された宇宙漫才師コンビのロルヴィクとタッチャーがまた器用に変てこな騒ぎをやらかしてくれます。エモシオ放射によるタッチャーの作業欲の高揚と、逆効果によるロルヴィクの遊戯欲の高揚には笑わせられますが、ハラハラさせられながらもその事でトバールグの秘密が判明し反感が友好と共感に変わるのですから実に良く出来た仕掛けだと思います。『幸福都市』ハンス・クナイフェル著: ソラナーの若い恋人達二人が惑星クマントの幸福都市に憧れを抱き《ソル》を出る決意をするが、これが後に大きな波紋を呼ぶ事になるのだった。エモシオ放射による偽りの幸福で種族の維持を図る彼らの方法には不気味な物を感じますが、どうして異性間に自然な愛が生まれないのかの答は未だなく、次巻以降に注目したいと思います。
本巻の翻訳者、赤坂桃子氏のあとがきは今回も一頁しか貰えない長く厳しい文章修行の道についての短文です。超越知性体・具象ヴェルノクはその姿を現すのか?トバールグの上位者の正体とは?ローダンはモジュールが送信して来た映像からテラの手掛かりを得られるのか?行動を封じられたローダンと状況を把握出来ないアトランの次なる一手は?久々に実力派新人作家が登場し、多くの疑問に答が出そうな次巻に期待しましょう。