この本の扉を開くとすぐに、カラフルなマッチ箱の写真が現れます。
これは作者が編集者の時代に、幸田文を訪ねて毎回持って帰った幸田文本人の手作りの作品だと言うことです。
銀行のマッチでは味気ないからと、その時々の季節に合った千代紙を貼ったものだそうです。
そんなある日、作者は湿ったマッチ箱に出会います。
それは、乾かす時間が無かったからです。
毎回持って帰る作者への幸田文の思いやりです。
そんなエピソードは、作者が持ってきたシラウオを玄関先で食べて「おいしい!」と言ったと言う事にもつながります。
そんな優しい気配りの幸田文の作品と人物を、幸田文のファンを語ってやまない作者の愛情あふれる目が、その作品を追って、見事に解明してゆきます。
露伴に関する文章から、徐々に独自の文章へ進み、「崩れ」に至る文の創作活動を、その独自の言葉使いや作風から、露伴とは関係ない天賦のものだと語ります。
と同時に、露伴との生活の中で培われたものでもあるとします。
私も大好きな作家幸田文の見事な解説で、文の作品の理解が更に一歩深まった気がします。