登場する3人の女性たちの輪郭がはっきりと伝わってくる。性格描写が巧みだからだ。
愛すべき血を分けた娘であっても、神経を逆なでされ続けるとやがて愛情は冷えてゆき、他人を見つめる眼で客観的に評価できてしまうもの。母親から母性が乖離する瞬間を読み、背筋がぞわっとした。しかしそれだけで終わらない。
積もり積もった負のエネルギーは、人によって屈折する角度を変え色を変え照射する。人に理解されたいと望みながら、相反するように心を閉ざしてゆく心の流れに、正常から異常への喫水線を探した。
物語を読み進むうち、私は3人の女性全てに感情移入していることに気がついた。性格もおかれた環境も全て違うのに、私は3人の女性たちの誰にでもなれる素質があるのだろうか。いや、そうじゃない。
女性であることを浮き彫りにした作品は他にも多い。そこに出てくる登場人物は大抵、まるで血液型占いのように、言うことや行動がパターン化されているから、わかりやすいといえばわかりやすい。そういう作品では、登場人物のうち、自分と近しいと思う者を1人選べといわれれば苦もなく選ぶことができる。行動的な人が実は内向的、、、なんてよくある話。でも、現実世界では、1人の人間の心の中に入り組む感情は、もっと複雑に綾をなし、多岐に渡り渦を巻いているはず。型どおりにゆかないのが人間だ。・・・そういう意味で、この作品は、とても現実的だった。だから3人の女性たちに感情移入し、1人1人がまるで生きてそこにいるように、実在する人物のように感じられたのだった。オススメです。