年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた大学教授による、いわゆる「宙に浮いた年金」に代表される年金記録問題の全容を俯瞰した一冊。年金記録問題の責任は、厚生労働省や社会保険庁ばかりにあるわけではなく、記録問題を政局に結びつけた民主党の戦略や、それに屈した政府・与党の不甲斐なさ、果ては虚偽の申請すら行っていた一部の企業・国民にもあるとし、これ以上の時間の浪費は止めてこの問題にけりを付けるべきと明言している。その上で、「謝るべき者(政府・行政)が謝る」「許すべき者(国民)が許す」「莫大なコスト(税金)がかかるだけの記録統合作業は直ちに止める」「被害者は税金で直ちに救済する」ことを提唱している。これら一連の主張は、ともすると暴論とも受け取られかねないが、本書に目を通すと、著者が記録問題発生の原因を実務的側面も踏まえて丹念に分析し、記録改ざん問題の実態解明に真摯に取り組んだ末の提言であることが良くわかる。とりわけ、漢字カナ変換をめぐる「窓口担当者の職人芸」(p.54〜55)にまで言及されては、実務経験者とて生半可な反論はおよそ不可能。こうした客観的かつ緻密な分析と、「最後の1件まで記録を統合することは不可能でも、最後の1人まで被害者を救済することは可能だ」との言に代表される良心的スタンスは、まさに法律家の鑑(かがみ)のそれである。この期に及んで年金問題を政争の具に利用する輩は、まずは著者の爪の垢を煎じて飲んでから年金問題を語るべし!