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5つ星のうち 1.0
著者の勉強不足に基づく思い込み。絶版を,
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レビュー対象商品: 年金問題の正しい考え方―福祉国家は持続可能か (中公新書) (新書)
著者は、まえがきのなかで、年金制度の誤解を解き、多くの人に正しい理解をもってもらいたいとしている。しかし、そうした著者の意図とは逆に、本書は、年金制度に対する著者の思い込みで溢れている。次が端的な例だ。P85表4−2で、著者はまず、厚生労働省による厚生年金財政の収入と支出の数値を引用している。2005年度を例にみると、収入28.3兆円、その内訳は保険料収入20.8兆円、運用収入3.0兆円となっている。こうした数値を引用して、次のページで筆者は次のように述べる。「収入合計には、保険料収入と運用収入以外の何かが含まれているのだが、それが何かは不明である」28.3兆円と20.8兆円および3.0兆円との差4.5兆円が不明であるというのである。 しかし、差額4.5兆円は、支出の内訳に計上されている基礎年金拠出金11.1兆円に対する3分の1の国庫負担が主体であることは、厚生労働省の『財政再計算』など を読めば直ぐに分る年金制度の基本中の基本である。 このようにして、著者は、自分の勉強不足に非があるのに気づかぬまま、厚生労働省の試算を疑い、自ら試算を行い、それに基づいて論を展開するのであるが、著者自身が年金制度を正しく理解していないのだから、それに基づく著者の試算や論理展開が正しいはずもない。 そもそも、著者のいう不明の差額4.5兆円が、基礎年金拠出金が主であることはP77の表4−1を作成している時点で気づかなかったのだろうか。表4−1には、2003年の厚生年金の収入内訳ものっており、保険料収入19兆2,425億円、国庫負担金4兆1,045億円、積立金運用収入2兆2,884億円などとなっている。著者は、厚生労働省の試算を疑ったのなら、自ら試算をする前に、厚生労働省年金局に電話一本かけるべきなのだ。「ああ、それは基礎年金拠出金への国庫負担が主ですよ」と答えてくれるはずだ。 そのほかにも、マクロ経済スライドに関し、「マイナス0.9%という調整率は政策として決まっており、2023年度まで適用され続けることとなっている」(P105)とあるが、2004年の年金改正の柱であるマクロ経済スライドに対するこうした理解も誤っている。調整率は0.9%になどと決まっていない。毎年度変動する。適用も23年度と決まっている訳ではない。厚生労働省が政治家向け説明や審議会に使う資料(往々にして核心がぼかして書いてある)を読むだけで済ませ、法律に遡らないとこうした事態に陥ることになる。実際、09年財政検証では、2038年度までのマクロ経済スライド適用が必要と試算し直されている(恐らくこれも実現しないだろう)。 中央公論新社は、この本を、年金制度の専門家数名にレビューして貰い、その上で、今後の取り扱いについて真剣に検討すべきだ。事実誤認に基づく思い込みに価格をつけて売っている責任を痛感して欲しい。著者が「年金制度の正しい理解」を願うのならば、まずは、この本を絶版にすべきだ。
20 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
年金問題を冷静に考えるには最適,
By kirkhanawa "カーク船長" (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 年金問題の正しい考え方―福祉国家は持続可能か (中公新書) (新書)
社会保険庁が管理する年金保険料の内「宙に浮いた年金記録」が5095万件、更に93万件と1430万件もの不明年金が在ったことも発覚して、社会保険庁の杜撰さが指摘され、政府首脳のボーナス返納から社会保険庁職員のボーナス返上と、マスコミを賑わせている。「年金問題を政争の具にすべきでは無い」と言うのは正論であるが、政治家の発言行動は混迷を極め、マスコミの論調も相変わらず異常事態を騒ぐだけで何の見通しも無く、一刻も早い「短期的な救済策」から「長期的且つ建設的な制度提言」が何も見えて来ない状況は「不可解」の一言に尽きる。 著者は「年金制度は現代福祉国家の持続可能性に関わっている。公的年金は社会的弱者だけの福祉ではなく、全ての国民を対象に生活基盤を安定化することを目指した包括的制度であって、国家が果たすべき基幹的機能の一つである」と説き、「望ましい年金制度は次の4項目の基準が満足することが必要で、専門家だけでなく、多くの人々が積極的に議論参加出来る様にしなければならない」とし、将来世代に対する我々の重大な責任としているのには説得力があった。 基準1 持続可能であること 基準2 それぞれの世代内では、同一拠出に対して同一給付となること 基準3 異なる世代間で、相対的年金水準が一定に保たれること 準則 現役世代の負担が一方的に上昇したり、高齢者世代の給付水準が一方的に 削減されないこと。 基準4 将来の拠出負担と給付水準は、人口変化と経済変化に左右されるが、どの様に決 まるのか、明確な予測が提示されること
10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ま、社保庁の仕事振りに腹が立つのは、誰しもなんですが…,
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レビュー対象商品: 年金問題の正しい考え方―福祉国家は持続可能か (中公新書) (新書)
年金制度の未来にとって未納問題も、社保庁の無駄遣いも職員の弛緩し切った仕事振りも副次的な問題に過ぎない。少子高齢化はもちろん問題だが、73年スキームはこの問題を措いても維持不可能な大盤振る舞いだった。04年修正は正しい方向に踏み出しているが、せいぜい制度を30年程度延命させたに過ぎない。まず大前提として、公的年金制度の維持は国民にとって有益である。しかし現行制度ではいかにシミュレートしても破綻は不可避(使われる数学は高校初年級レベルか)。最大のハードルは団塊世代ではなく、75年以降生まれ(三浦展などの言う「真性団塊ジュニア世代」)の引退期にあたる2040年代である(p72)。持続可能で透明性の高い制度の設計が喫緊の課題である。 これに際し、著者は公正性の観点からいくつかの留保を設ける。まず年金財政は、現役世代と高齢者世代が「公平」に負担を分かち合うべき。その意味で積立方式や消費税方式は望ましくない。特に後者は、企業負担軽減化の他に見るべき利点がない。むしろ年金制度の空洞化を招き、労働意欲を削ぐ恐れがある。また世代間対立を煽る(p221)。この点、つい先日厚労相に就任した舛添要一氏がTVで「やはり消費税化が望ましい」と発言していたのが気になる。議論を尽くして欲しい。 ただ、三号被保険者の扱いが厚生年金加入者との比較では不公平でないと論じる件りで気になる点があった。著者は専業主婦世帯・共稼ぎ世帯の世帯収入を共に2xと置いて計算し、拠出額も受給額も等しいという結果を導く(p204)。しかしこの設定は、モデルに相応しいだろうか。もう少しいろいろなケースを比較検討しないと、容易には納得しがたいと感じた。
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