この本には、これからの時代に勝ち組として生き残るため「今の仕事を快適にする36の法則」と称する、会社員に対する「おすすめ行為」が解説されている。
いくつかの例を端的に示すと「遅刻せよ」「時間は守るな」「ルールは守るな」「定例会議はサボレ」「二日酔いは、嘘ついても午後から出勤せよ」「上司の命令には従わなくていい」「一生懸命働くな」「悪いことでもやっていい」等々、他にもかなり沢山ある。
まず問題は、これらの「おすすめ行為」を、社員が実際に積極的に実行すれば、(常識的に考えて)会社の組織運営や正常な業務執行が、大きく阻害されることである。
さらなる問題は、普通の「会社」には、社員と会社の間に「契約」関係があり、社員は報酬をもらうという権利に対応する義務として、会社の方針や指示、或いは規則やルールに従って、誠実に勤務しなければならない「誠実労働義務」をはじめ「職場規律維持義務」「職務専念義務」などがある。この本の著者(やこの会社?)は、これらの極めて重要な法律を全く知らないようだ。
つまり「おすすめ行為」の多くは、労働契約法や就業規則(労働基準法)等に違反すると思われるものがかなり多く、これらを特別な理由なしに実行した社員は、昇給・昇格の低査定はもちろん、懲戒処分や解雇の可能性すら十分あり得る問題(違法)行為と考えられる。
もし仮にこの本は、例えば逆説的に表現したものであるとか、考え方のヒントだけというなら、それなりの書き方や解説などの配慮が必要だが、それらしいものは全く見当たらない。
著者も会社も実名入りで、一部上場企業の(直前まで)実質的なナンバーワン経営者であり、現在も特別顧問という要職にある人が書いたと明記されている。この会社では、この本にあることを社員に本当に実践させているのだろうか。もしそうであるなら、とんでもない会社であると思うのだが?