武田百合子と文章の雰囲気が似ているという評判を聞いたことがありますが、本書はなるほど「遊覧日記」を彷彿とさせます。
東京の名所とはいえ、決して観光名所に限らず早稲田や大手町、十条、平和島、円山町、義士祭前日の泉岳寺など東京近辺に住む人なら「なるほど。あれもまぁ名所だなぁ」とうなずけるような名所を平日に巡ります。
著者が素のまま観察している描写にとどまらず、ある場所では猫に、ある場所ではテレビのドキュメンタリーのカメラのように変幻自在に姿を変えて、幻想も交えた平日の風景を、人々を、描き出します。
著者のエッセイにしては文章にひねりが少なく、容易に流れを追うことができて読みやすかったですが、著者の特徴である非常にあいまいでどうともとれる文章が好きな方には少々物足りないかもしれません。
最後のおまけのように東京の「観光名所」をバッチリ巡った「バス観光」もたいへん愉快でした。