善良な人たちが頑張って大きなことをやり遂げようとする作品。五島列島から東京歌舞伎町をはさんで秋田へ、中心的な舞台の移動とともにチェンジされる言語がダイナミックで味わい深く、またそれぞれの言語を用いる登場人物たちがとにかく魅力的。暗くて重いものを抱えながら新しい道を探す者たちがいれば、根っからの呑気さを強みにして世の中に出て行こうとする者たちがいる。極道も政治家もおばあちゃんもそれぞれの個性を発揮。特に物語の根底をいろんな意味で支えているおばあちゃんが最高。彼らが織り成す群像劇が、読み進めれば進めるほどドラマチックに盛り上がっていき、やがて読むものに前へ進む元気を与えてくれる劇的なクライマックスへ。吉田修一さんの書いたもののなかで、ここまでエンターテイメント性の濃厚なものは今までなかったように思う。『悪人』に代表される人間のダークサイドの多様性の探求から、『横道世之介』の叙情あふれる常春な青春ストーリーをへて、さらに別の境地へ。これから次の展開にまた期待してしまいます。