「幸福とは何か」という議論が、活発になっている。
その背景には、我が国社会の変容から生まれる「不安」がある。
この本は、多岐にわたる「不安」の原因と結果を簡潔に総括している。
自殺、孤独死の増加、未婚率の上昇が産む少子高齢化、年金の破綻。
男女共同参画社会といいながら、女性を無視してきた社会と進まない子育て支援。
団塊の世代を手厚く保護する一方で若年層の雇用機会は減少、賃金は低下し、
もはや男性一人の給与では家庭を維持できない。当然、マイカー、マイホームの購入は不可能となり、
若者は、そもそも物欲さえ失い、草食化などと言われる。
外国人を受け入れず、貿易の自由化も拒否する社会は内向きになっているが、
その一方で、「ガラパゴス化」と批判され、「リスク」を取れとか、海外で通用する人材を、
などと言う。
こうした矛盾が産む「不安」の根本には、昭和期から続く「希望」や「幸福」そのものが古くなり、
同時に再現不可能となっていることにあるという。
日本の政治は「シルバーデモクラシー」とも批判されるように、
既得権益者(イコール、高齢者と言っても良い)の保護を目的としてきたが、
その希求する「幸福」そのものを見直す時期が来ているとの指摘は、
(反発も大きいだろうが)まっとうな意見だと思う。
やや簡潔すぎるきらいはあるが、各章毎に厳選された参考文献があげられているのが良い。
相当数の文献が読み込まれ、そのエッセンスが凝縮されたすばらしい一冊。