日本史の中で一番穏やか(それこそ平安)で面白くない時代が平安時代というイメージに縛られ、このシリーズ日本古代史も本巻以降は読まずにいたのだが、読み始めるとなかなか奥が深いことに気づく。
本書が扱う時代を大まかに色分けすると、平安時代の幕を開く桓武朝、唐風化が極まった9世紀、日本独自の政治文化が開花する10世紀。政治の表面では皇位の承継問題と藤原氏の他氏排斥がいくつかの政変をもたらす中で、史上初の幼帝・清和天皇の即位が時代の節目だとする。藤原良房が摂政になる契機となった訳だが、幼帝でも構わない程に天皇の機関化が進んだのだ、という指摘にはなるほどと思う。
摂政・関白に限らず、10世紀の延喜・天歴の天皇親政のときでも、天皇の私的な側近を公的に認知する等、律令制が予定しない政治が中央でも地方でも行われるようになる訳だが、律令制という外国の制度が日本の風土で変質するのは当然、という視点には賛成できる。古今和歌集には天皇側近の歌集という政治的動機があるとの説示にも納得がゆく。
ウジの結束力が弱まり、イエとその家職(武士もその一つ)の起源も10世紀にある。この時代に起源がある日本的なものは平仮名だけではない。
文献・考古学資料が少ない時代であるにもかかわらず、当時の街道の立札等を使った説明等がわかりやすくて効果的だ。