右派・左派・保守・革新という旧来の括りは、とうの昔に崩壊していたにも関わらず、我が国日本では、一部の先見を持った方達を除いて、多くの者が未だ冷戦を引き摺ってきた。それぞれの言論も新価値を見いだせず、先の見えない迷走と不安を内包し、冷戦後の大きな変化を感じつつも、変化へ対する怖れからか、はたまた既得権を失う事への警戒からか、誤魔化しの時代を形成してきた。
この冷戦崩壊未消化の原因としては、ひとえに戦後からの脱却、更に言えば先の大戦の終結が未だ終わっていない事を提起せざるを得ない。左派は反原発、右派は原発容認という括りが既に誤魔化しであった事が、3.11の大震災によって、誤魔化しきれない状況となり、これが露見してきた事は、新時代の夜明けを予感させる。
さて、本書、
平和主義ではない「脱原発」―現代リスク文明論の著者は言わずと知れた保守派の重鎮、西尾幹二氏。その著者が脱原発を志向した事は、前述のとおり、新時代への予感を感じざるを得ず。下衆な表現で礼を失するかもしれないが、期待と知的好奇心をもって本書を拝読させて頂いた。
小生と同様に、今が後世に歴史に刻まれる大きな変革の時と感じている者は一読の価値は有る。旧来の右派左派両派に切り込む視点と、先の大戦から現在までを俯瞰可能な著者(戦争体験者でもある)にしか持ち得ない視座は。これまでに記したとおり、新時代を洞察するには不可欠と考える。
※内容的には、他の書物など(雑誌やブログ等)に発表済のものが中心となっており、それらを整理し加筆し、未発表の総論で纏められたもの。断片的に既読してきた人にとっては、物足りなさが残るかもしれません。