本書は、男性誌の草分け的存在である「平凡パンチ」に、創刊時から立ち会い、初期のパンチの
編集に奔走した著者が、日記をもとに当時を振りかえる回顧録だ。
本書が伝えるのは、高度経済成長期の当時の時代的な喧噪と、毎週の締切に追われる編集室
の中の喧騒、その二つの喧騒だ。創刊時に冷遇された記者クラブとの折衝(このころからあった
のだ)、遅れる大作家の原稿、早朝に書道の先生に題字に頼み込みにいく(そして一度は断られ
る)ところなどなど、あらゆることが未開拓な時代ならではの、熱気が伝わってくる。自家用車すら
めずらしかったという時代ということもあり、今のようにデジタルで融通が利かないという不便はあっ
ただろうが、当時をふりかえる著者の筆致からは、毎日の仕事を楽しくやっていたということが、ひ
しひしと伝わってくる。
後に著者が携わる「
an・an」に先駆けて、男性ファッション誌的なコーナーをこの時点で打ち出して
いるところなど、なるほど先駆的だったことは確かにわかる。しかし、正直な話、著者の同僚や上司
といった個人的な人間関係の中で起こったことについての叙述が多いため、本書を100%楽しむこ
とは難しかった。そこには、評者が生まれた4年後に休刊したという時代的制約もあるだろう。
ただ、インタビューに対する石原裕次郎の気前の良さと、伊丹十三の離婚の際の著者との意図のす
れ違いなど、各偉人の知られざる側面を垣間見ることはできる。