登録情報
|
いたずらっ子でちょっぴり甘えんぼのお坊ちゃんとして登場する幼少の新八が、まずぐっと懐に飛び込んでくることうけあい。その他愛ない悪戯や仕草が微笑ましくて、愛情溢れる家庭に育った新八が気力体力を持て余し、やがて剣の道でそれを思う存分発揮するまで、読者の視線も見守るように温かくなってきます。
冒頭に殺伐とした雰囲気はありませんが、新八が多感な青年期に入り色々と思い悩むようになると、様々な人との関わり合いの中で移りゆく時代背景もじわりと見え始めるという、ごくごく自然なかたちで展開していく幕末の世界。
新八があくまで新八の視線で世を見つめていて、世の思想に侵されることなくその時々に自分なりに思い、行動する様子がしっかり描き出されているので、あまりごちゃごちゃとした世相は考えなくても新八の視線を追ってゆけば、すんなり幕末の世界に入りこめてしまうところがいいです。
そして惚れた女を巡る青年らしい感情もリアルなら、友情が芽生える時のからっとした性格も、らしくて素敵。
様々な思いの末にいつの間にか育まれていた藤堂平助との友情は、のちの因縁との絡みから重点的に語られており、印象的でした。
これが悲劇なのにやたら切なく痛々しく感じないところが、却っていいんですよね。新八の生き方そのものという感じで。
肉親の死、女の死など、幕末の動乱とは無関係に新八の周辺で起こった出来事にも丁寧な筆を割き、それらを経て明治、大正の世まで生き抜いた江戸っ子永倉新八の、多くを語らぬまでもひそかな意地が感じられる終幕への流れは技あり。
永倉新八の思いに一歩近づいた気にさせてくれる一冊です。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|