現代の頼山陽(褒めてません!)野口武彦氏による小説である。
史料を博捜しドキュメンタリータッチであるけれども明らかに小説であり、
歴史のお勉強をしたければ本書を読む前に家近良樹氏の「徳川慶喜」は
最低限読んでおくべきである。
著者は昔の喜劇映画の兵隊ものシリーズをイメージして本書を書いたそうだが、
主人公四人組は武士にして公儀直参である以上、
帝国陸軍に当てはめれば兵卒ではなく士官にあたるのではないだろうか。
また、松平容保や榎本武揚の抗戦行動が会津や箱館にいかに被害を与えたか、
しかしそれでもなお、戊辰戦争における全体の戦死者が
諸外国の内戦のそれよりいかに少なかったかを著者自身が克明に書き出しながら、
なぜ徳川慶喜を罵倒できるのかも不思議である。
他著書を見ても著者の慶喜憎悪はほとんど宗教の域に達しているので、
もう理屈ではないのかも知れない。
しかし会津の戦禍を原爆被害と同一にするのは断じて受容できない。
「広島、長崎のピカドン地獄と、そんなにちがわなかった」
宮崎十三八『会津人の書く戊辰戦争』
著者はこういう文になんの違和感も感じないようである。
そうでなければ会津の「悲劇」の証明としての引用などできないだろう。