自分の属していた組織が崩壊したらどう身を振るか?
下谷御徒町に生まれ16歳で御徒となった政恒は、28歳で幕府が消滅して俸禄を失う。
伝手をたどって江戸っ子なのに群馬県庁に奉職すること15年、50歳で東京に戻り小間物屋・紙張物屋を開業、還暦を過ぎて料理茶屋の帳場(経理であろう)勤め。更にこれに前後して帝室博物館に奉職、70歳過ぎまで働いた。
この間、23〜47歳までに六男五女を儲けるという精力ぶり、敬服する。
政恒という人はマメだったようだ。幼少から老齢に至るまでの出来事について仕事や生活ぶりや累積収支まで細かく記している。加えて挿絵が非常にうまい、素人離れしている。一級の史料だ。
将軍の行列の前触れに御徒が白扇をかざして告知するとか、彰義隊の戦いの翌日の上野広小路は手足バラバラの死体だらけで血の海だったとか、初めて知る話がいっぱい。
政恒歿後1世紀、自分の一代記が平成の日本人に読まれて、泉下の政恒もさぞや喜んでいることであろう。