京都の四季を撮る写真家の第1人者といえる水野克比古氏による常寂光寺の四季の写真集です。見ているだけで溜息のでるような美しい写真の数々でした。
常寂光寺は嵯峨野を代表する寺院で紅葉の時期は物凄い参拝客が訪れますが、普段は静かな佇まいが感じられる鄙びたお寺です。個人的な思いとしては、嵯峨野随一の紅葉の名所だと思っていますので、毎年秋には訪れてその素晴らしい情景を堪能しています。
常寂光寺の住職であり大学教授の長尾憲彰氏による同寺の歴史や縁起についての序文がありますが、日蓮宗の日禎上人が文禄4年(1595)に本國寺を出てこの地に隠棲し、常寂光寺を開創したそうで、1620年建立の多宝塔は重要文化財ですし、京都市内を一望できる場所に建っています。
常寂光寺の良いところは山の斜面のお寺ですので紅葉を上から俯瞰して眺められるのと、人の多さは別として嵯峨野の喧騒から少し離れた山寺の趣もありますので、嵯峨野らしい鄙びた情緒を持っているところでしょうか。どこか侘び寂びといった風情がただよい、京都の紅葉散策にはかかせない寺院の一つです。一つのお寺の写真ばかりですから、構図の変化には自ずと限りがありますが。
そんなステキな常寂光寺の四季の魅力は、水野克比古氏の写真が雄弁に語っています。紅葉の時期だけでなく、新緑の頃や雪景色などの写真もあり、その静かな風情はしっかりと伝わってきました。四季折々の花の種類の多さに圧倒されます。蓮もこんなに多くの花の種類があるのを知りましたが。
水野氏のあとがきにありますが、大文字の送り火の写真を撮った時、この地がまさしく都の西方、「常寂光土」なのだ、という感想から深い感慨が伝わってきました。