ベトナム反戦ものとしても、身体障害者の問題を描いたという点でも、女性の自立を描いたという点でも、あらゆる面で先駆的となった素晴らしい作品です(PTSDを実際的に扱っている点も時代を先駆けている)。冒頭のビリヤードシーンの会話と最後のルークのスピーチが迫力に満ちていて、前から「その理由はどこにあるのだろう」と思っていたのですが、今回の特典映像で了解しました。実際のベトナム帰還兵の肉声を使っていたからなのです。反骨の映像作家、ハル・アシュビーの真骨頂といった感があります。車椅子の描写も今回再見して見事だと改めて思いましたが、これもJ.ボイドが実際の車椅子生活者と交際した中で学んだものだとか。ちょっとしたディテールに説得力があるのは、このようにきめ細やかな映画作り故なのです。
特にこの映画、今回DVDで見直してみて、1人1人の人間像が生きているという点に感服しました。主人公達はそれぞれ矛盾を抱えています。貞淑で従順だったサリーは情熱に身を任せ、1人の女性としての選択を自らしていくようになります。周囲に刺々しい態度を取っていたルークはそれを乗り越え、そして英雄になりたかったボブは戦争の惨さを知り、そして救済とでも言うべき死へと泳ぎだしていきます。皆お互いに心の傷を持ち、お互いに傷つけ合って、しかしそれでもやさしさを獲得していくのです。副主人公でも、例えば兄弟が自殺して捨て鉢になり泥酔する女性など、弱いがそれゆえに生身の真実を持った人達がいっぱい登場します。監督ハル・アシュビーはディスカッションを繰り返し、俳優の意見を取り入れ、精緻なリサーチも行って、リアルな登場人物と映画世界を構築しました。正に名匠。特典映像「ハル・アシュビーを偲んで」は、今や忘れられようとしているこの名監督の姿を知る上でも貴重なものです。ぜひこのDVDを手にしてみて下さい。