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55 人中、52人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
大人のための「痛み」の物語,
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レビュー対象商品: 帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書)) (単行本)
三部作と思われていたゲド戦記は、大人の読書にも十分耐えうるが、基本はやはり子供のために書かれた物語だった。しかし、長い沈黙を破って出たこの最後の書、「帰還」は大人のための「痛み」の物語である。世界の均衡を取り戻すため、自らのすべての力を使い果たして戻ってきたゲド、平凡な女としての人生を選んだ、かつては闇に仕える巫女であったテナー、そして、強姦されて火に投げ込まれ、瀕死の淵からテナーに助けられた少女テルー。しかし三人に容赦のない悪意が付きまとう…。 偉大なる力は失われ、罪も無い子供は徹底的に損なわれる。読んでいる間中、文字の間に漂う緊迫した空気に肉体的な痛みを感じるほどだったが、これほど心の深いところまで入り込む本に出会ったのは久しぶりのことだった。これは夢や冒険のお話ではない。失っても失っても生きていかなければならない、私たちの物語なのだ。
34 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
変化しながら続く物語,
By 陸海 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書)) (単行本)
ゲド戦記は、4巻以降から評価を変える人が多い物語です。刊行時期をみますと*1巻 影との戦い 1968年(邦訳初版1976年) *2巻 壊れた腕輪 1971年(邦訳初版1976年) *3巻 さいはての島へ 1972年(邦訳初版1977年) *4巻 帰還 1990年(邦訳初版1993年) *アンソロジー 伝説は永遠に 1998年(邦訳初版2000年ハヤカワ文庫) *外伝集 Tales From Earthsea 2001年(未邦訳 邦訳仮題『ゲド戦記外伝』岩波書店) *5巻 アースシーの風 2001年(邦訳初版2003年) 3巻までは比較的短い期間に一気に書き上げられたこと、それなのに3巻と4巻の間に18年、4巻と5巻の間に11年の時間があるのがお分かりかと思います。この間の作者の心境の変化が、作風にずいぶん影響しているため、読者も評価を変えているのでしょう。(段々女性の視点からの物語になっているように、私は思います。より深く共感できようになりました。)そのあたりの経緯についてもっと詳しく知りたい方は、エッセイ集「夜の言葉」(1979年)「世界の果てでダンス」(1989年)をご覧ください。作風の変化は読者にどのように受け入れられるか。4巻は、その意味で試金石ともいえる作品です。 私がゲド戦記に出会ったとき、この物語は全三巻でした。それが、いまや「最後の書」と銘打った4巻の副題!を覆して、5巻まで刊行されています。今後どうなるかもわかりません。ゲド戦記は、変化しながら続いてゆく物語なのです。私も10年来のファンです。どうかこの物語に出会う方々が、変化も受け止めながら、長く読み継いで下さることを願うばかりです。
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
地に足がついた、緻密で現実感のある描写が印象的,
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レビュー対象商品: 帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書)) (単行本)
ゲド戦記第四部。三部作だった当シリーズに16年振りの続刊として刊行され話題になった。ゲドの故郷であるゴントを舞台に、第三部のラスト前後にストーリーがはじまる。第二部のヒロインであったテナーが再登場し、テナーの視点でストーリーは進む。 20年ぶりの登場に当然のことながらテナーは年を経、結婚し子を産み、やがて育った子は巣立ち、夫は死に彼女は寡婦となっている。 親による虐待で顔と身体を焼かれた少女テルーをひきとり暮らすテナーの元に、ゲドの師で一時テナーを育ててくれた老師オジオンの危篤の報が届く・・・。オジオンを見取った頃、竜の背に乗ったゲドが故郷に帰還する。が、ゲドはすべての魔力を失っていた・・。 前作までは多少なりともファンタジーの色彩が感じられたが、本作は魔術師になる道を自ら捨て普通の女になったテナーが中心になり、ストーリー上、魔法は遠景に過ぎない。描かれるのは周囲の人々との軋轢や女性としてのテナー。まさに地に足がついたストーリーが展開する。著者の重厚な描写は前巻に増し、ストーリーは一本道なのだが、遅々として進まないかのように見える。 が、その雰囲気にのればそれ自体が快感になってくるのが不思議だ。 ル・グインの描写は時折、直接的な描写は避け、断片的なセリフや間接的な描写でのみ描かれる場面もあるため、大事な場面や描写を読み落とすことがある。本作もラストの展開はまさにそうだろう。注意深く読み進めた上ではじめて味わう感動。再読したくなる。
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