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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
胸に残る。,
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レビュー対象商品: 帰れぬ人びと (文春文庫) (文庫)
雨の日の町の匂い、砂埃が映し出す滲んだ夕日、コンクリートの階段・・・・。作中に出てくる風景が妙にリアルに頭に浮かんだ。「そこ」に確かにいる人たちの感情が一つの景色として浮かんでくるようだった。この本を読んでいて感じた多くは怒り、だった。苛立ちという方が近い。どうしてそんなことになってしまっているのか。登場人物に対するものか、それとも他の何かなのか、わからないままもやもやした気持ちで読み続けた。そして読み終わった後はどうしてこんなに人の背景や生活を描き出すのが巧いのだろうと息をもらした。複雑な感情の中で生きる人やその環境といったものを深く感じられ、素直にいい作品だと思った。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
若い感性に触れる,
By のいのい (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 帰れぬ人びと (文春文庫) (文庫)
鷺沢さんが亡くなってからもう3年も経つんですね。
本書は処女作にして文學界新人賞受賞作である「川べりの道」を収録した中編集。 本書の魅力はなんと言ってもその感性のみずみずしさと文体のすがすがしさですね。 特に「川べりの道」は高校生の時に書かれた作品だけあって、やや若さが残るものの、イヤミの全くない気持ちの良い作品です。 鷺沢さんの後期の作品しか知らない人には、かなり新鮮に感じられるでしょう。 ただ、夭折した彼女の一生を思うと、つい各作品に通底する人生に対する直感的な不安のようなものも感じずにはいられないのですが・・・。 まあそれは深読みのしすぎというものでしょうか。 いずれにしても、しっかりした魅力的な中編集だと思います。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
青春って暗いものさ,
By とおのとほ (山形県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 帰れぬ人びと (文春文庫) (文庫)
「帰れぬ人びと」を読み終わってみれば、村井一家だけではない、帰れるところを持たない家族は多いと気づく。それが現代なのだろう。幸せだった家族を現代人は多く喪失して生きている。気を取り直して、新しい幸せを求めて生きていくしかないのだ。
「村井」がやけに女性っぽい言葉遣いなのは意図したものか気になった。 本作品集はテレビドラマにでもなりそうな「かもめ家ものがたり」以外はみな暗い。その暗さは日本の小説の伝統の路線上にある正統な暗さだ。本作品集で自分の背負ってきた暗さをトコトン追求し決着をつけたのだ。 以後の作品は、この正統性から脱皮して、新しい手法による新しい文学を作っていく。キャピキャピな夢多き女子高生を描いた作品を求めて本作品集を手にした人々には失望を与えるといっても過言ではない。けれど日本文学が明治以来のテーマとして俎上に載せてきた「家族」を真正面から切り込み、「帰れぬ人びと」というコンセプトを提示したのは大きな成果ではないだろうか。結局、芥川賞を受賞できなかったのは、正統性へ止めを刺したことへの驚愕と羨望による文壇からの復讐だったのかもしれない。
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