クリストファー・リー主演のドラキュラ物のベストは一作目ですが、吸血鬼映画スターとしてのリーを愛でるには本作がベストだと思います。
冒頭のショックシーンより後、ドラキュラが復活するまでの演出はやや冗長ですが、本作の特徴はリーの下僕となる人間に怯懦に襲われた聖職者と報われぬ愛に苦しむ酒場の娘を配置し、両者の苦悩が描かれている事と、リーと対決するヒーロー役が本シリーズでは珍しい明朗快活な無神論者の庶民派青年で或る事と、何と言っても撮影監督としても高名なフレディ・フランシスがあらゆるテクニックを用いてリー演じるドラキュラの超自然的なイメージを魅力的に撮っている点です。
良く緑掛かった顔色のリー「ドラキュラ」のイラストを見掛けますが、それはこの映画でも見られる緑のフィルターを掛けた照明を当てられたリーの不気味な様子を描いた物です。
後、「気が付けばドラキュラ」演出。
現在なら霧に変化したドラキュラが窓の隙間から入ってくるSFXで表現する所をカットと音楽で、ふと振り向くとドラキュラがそこに長いシルエットと共に立っている、という演出を用いており、ドラキュラがまるで壁をすり抜けて来た様に観えて怖いのです。
この場面との対比で十字架に怯えたドラキュラが窓ガラスを突き破って逃げるシーンのダイナミックさが際立ってきます。
余談ですが本作で、初めてドラキュラ本人が杭を打たれるシーンが出て来ます。
ヒロインにハマー歴代屈指の古典的美女、ヴェロニカ・カールソン、その保護者の司教役で英国ではメグレ警視役で高名な包容力溢れるルパート・ディヴィス、気の良いパン屋兼酒場の主人役でマイケル・リッパー、ヒーロー役のバリー・アンドリュース、苦悩する酒浸りの司祭にはピーター・ボイルと良く似た髪形のイヴァン・フーパーと言った面々が脇を支えています。
ハマーのドラキュラ物として初めてパインウッドスタジオに拠点を移した記念碑的作品でも有ります。
クッシングは残念ながら出て来ませんが、クリストファー・リー・ファンの方にはお薦めです。