日本は何故無謀な戦争に突入したのか。それは海軍の暴走によるものである。では帝国陸軍は何故それを止めなかったのか。陸軍は官僚として人事抗争に明け暮れ、日本の将来など気にもかけていなかったのである。
著者は明治初期の陸軍創設から日清・日露戦争を経て第2次大戦までの陸軍組織の歩みを追い、大正・昭和期の陸軍を陸軍官僚組織としての腐敗と怠惰の観点から記述する。
明治初期に導入した参謀制度は大局観を持つこともなく、現地司令官に勝手な命令を出す組織になっていく。日露戦争後の日本陸軍は完全に官僚組織化し、ドイツ流社会主義に染まり、さらに他省庁の若手革新官僚と図り国政を自由に操った。日露戦争に従軍した世代がいなくなると、平和を追求するどころか、不要な軍備を拡張し、クーデーターを起こし、大企業に天下り、統制経済を強いた。
軍事や戦前の事を語ると右翼とレッテルを貼るマスコミが多いが、昭和陸軍は明らかに社会主義的であった。また、それを嫌う民衆による民主主義も作用していた。戦後、軍は解体されたが他の省庁では戦前の軍と同じことをまだ続けている。
国家官僚は大局観を持って国民の自由と安全を守るべきとの信念から独自の陸軍史を世に問うた別宮氏に敬意を表したい。