過去の「歴史群像」の記事から関連するものを集めてまとめてある。このシリーズは、解説のレベルが高くて非常に読みごたえがあるものが含まれているが、本書もそのような一冊だ。既にたくさん出版されている太平洋戦争のそれぞれの戦いについて解説してあるものとは少し異なり、戦略・戦術レベルからの解説に重点を置いていることが特徴である。
内容としては、以下の通り。
・真珠湾攻撃を「奇襲」にするための日本側の工夫
・戦略面からの真珠湾攻撃の分析と検証
・マレー沖海戦での日英の作戦分析
・蘭領インドネシア制圧に重要だったスラバヤ沖海戦の解説
・インド洋作戦の日英の戦略分析
・珊瑚海海戦の戦略的な意味
・伊号潜水艦の米本土攻撃作戦
・大戦に先立つアメリカ海軍の戦略の変化と日本海軍の戦略の歴史
・アメリカの対日「オレンジ計画」
特に、一般の戦史の本ではそれほど重要視されることがないインド洋作戦の分析は興味深かった。実はミッドウェーと同じような展開になりそうだったことも驚いたが、その後に英海軍が昭和20年までインド洋に出てこなくなった戦略的な意味を指摘している点については考えさせられた。
また、日米の実際の作戦展開には、開戦までに長年両国が練って修正してきた対日/対米作戦の影響が色濃くあることを指摘している、太平洋戦争前史についての解説もなかなか見事だった。
全て白黒印刷だが、地図や写真や各種のデータ類も豊富。また、連合艦隊の編成、資源と生産力の日米比較といった付録も充実している。