帝国主義というと、私にはホブスン(J.A.Hobson)=レーニン(V.I.Lenin)流の「資本主義の最高段階=死滅しつつある資本主義」という解釈、定義が思い浮かんでしまうのだが、本書の著者であるアンドリュー・ポーター(Andrew N.Porter)教授は、巻末の「参考文献」からも判るように300冊以上の書物を読み解き、少ないスペースの中、<ヨーロッパの帝国主義>に関する様々な論点を析出し、簡潔に整理して提示してくれている。
具体的には、関連する要素が複雑に絡み合う帝国主義(歴史的存在としての帝国)を検証するにあたって、前述の古典的な又は政治的あるいは社会的・経済的な接近、そして従属論=世界システム論からのアプローチ等を解説し、それらに対して批判的な検討を加えている。また、帝国主義に係る研究との関わりで、同教授は、ヨーロッパのみならず「非ヨーロッパ社会の歴史」を持続的に解明することも、E.サイードの議論などを引き合いに出しながら今日的な課題として提起している。
当書は、岩波書店の「ヨーロッパ史入門」シリーズ全10巻中の1冊で、原題は“EUROPEAN IMPERIALISM,1860-1914”である。ここで特徴的なのは、帝国主義の原綴りが「複数形」ではなく「単数形」となっていることだ。この意味について、訳者である福井憲彦・学習院大学教授は「19世紀後半から20世紀初頭の時期を、一つの括りとして世界史的に押さえてみようというのが、おそらくは著者の狙い」(訳者解説)と推断しており、このことも同書の大きな特色として挙げられよう。