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帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史
 
 

帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史 [単行本]

與那覇 潤
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

監督・小津安二郎に影を落とす、兵士・小津安二郎。
バリバリのモダニストだった小津安二郎の、国民的映画作家への転身の背景には、中国大陸での戦争体験があったのではないか。
小津映画の精緻な解読を通して、昭和精神史、日中関係史を再考する、新しいタイプの歴史書。

内容(「BOOK」データベースより)

監督・小津安二郎に差す、兵士・小津安二郎の影。小津映画の精緻な解読を通じ、「昭和」「日本」とは何かを明らかにする、新しいタイプの歴史書。

登録情報

  • 単行本: 238ページ
  • 出版社: エヌティティ出版 (2011/1/14)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4757142617
  • ISBN-13: 978-4757142619
  • 発売日: 2011/1/14
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 47,107位 (本のベストセラーを見る)
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あの『中国化する日本』の著者が、その前に書いた意欲的な昭和文化史。
『中国化〜』の過剰なほどの読みやすさと刺戟に比べると、本書は
人文書らしい体裁と行文で一気には読めないが、実におもしろい。
小津の、主に戦後の作品群をテキストとして、社会状況の変化を活写する。
しかし小津映画への関心の有無にかかわらず、大いに興味を喚起するはず。

著者自身、『中国化〜』の中でもコメントしていたけれど、あそこでの
コアとなる主張は、先立つこと10カ月、昭和の断面を小津作品という
視座から捉えた本書において端的に語られていた、といえそうだ。
たとえば、小津が一兵卒として出征した中国大陸の社会状況の定義は、
「高度に理念化された普遍的ヴィジョンの下で、所属集団なき個人の群れが、
急速な終結と分散を繰り返す動的な政治経済の情勢」(p168)とされる。

これは『中国化〜』で要約された「可能な限り固定した集団を作らず、
資本や人員の流動性を最大限に高める一方で、普遍主義的な理念に
則った政治の道徳化と、行政権力の一元化によって、システムの暴走を
コントロールしようとする社会」(『中国化する日本』p48)と呼応する。

著者によれば、そのような「中国化」が最も暴風化した時代が、敗戦直後の
日本社会なのだが、小津に関心がない読者も、著者が鮮やかに再現してみせる
時代と格闘する同時代の様々な文化人たちの相貌には目を見張るのではないか。
たとえば、愛読者が衰えない網野善彦の代表作『無縁・公界・楽』と、
『異形の王権』を、「戦後の〈中国化の季節〉に激しく魅惑されながら深く
傷ついた一人の青年による、生涯を賭したもうひとつの〈中国化の季節〉の
復元」(p184)と断じる4章は、本書の白眉。そこには、はしゃぎすぎた
竹内好もいるし、たちつくす丸山眞男もいる。

とはいえ、小津の戦後の諸作を従来の映画評とは違う視点から説いた手腕にこそ、
やはり本書の魅力を求めるべきであろう。とくに「呪わしき明治維新」と題された
最終章でじっくり語られる「東京暮色」の分析には、大いに感じ入ってしまった。
なにしろ1957年公開の同作は、戦後公開の15作の中で、「キネマ旬報」の順位
(60年代までの同誌のランキングの権威は我々の想像を絶するようだ)で19位。
これは歴代の小津作品中最低なのだから。この最終章はまた、ある仕掛けによって、
「東京暮色」のラストシーンを憶えている読者を、ぐっと映像的に惹きつける。
そして、「日本的」と鍾愛するものの根源、あるいは秘密に触れさせる。

繰り返そう。小津作品への関心の有無にかかわらず、本書はおもしろい。
だが、小津作品を愛し、古き良き「日本的なる何事か」の象徴、と思っている
読者にも、本書はまことに刺戟的な読書体験を与えてくれるはず。
このレビューは参考になりましたか?
14 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 本書は小津安二郎の映画を、「思想的実践の場として
の映画という観点を組み入れた、新たな文化史の語り」
を目指して論じるという、かなり高踏な立場からのエクリ
チュールです。従って丸山真男や竹内好に網野善彦ら
名立たるオピニオンリーダーと並行して、小津や内田吐
夢の映画が語られるという何やら面映ゆい具合になって
います。
 その中で強いてキーワードを挙げるなら、『暗夜行路』、
「暴力」、「中国化」ということになるのでしょうか。例えば
『風のなかの鶏』(著者はこれを『暗夜行路』の翻案と言
うのですが)と遺作『秋刀魚の味』とでは暴力の有無だ
けみても大きな落差があります。確かにここは、誰でも
探求したくなるところで、著者の指摘にハッとしたところ
もありました。それにしても大袈裟に過ぎますね。日中
戦争を挟んで、その前後の日本の家族の運命を、悲喜
劇を含めてクールに見詰めたものとし、その異同の意味
を時代背景との対応から手繰っていけばよいのではな
いでしょうか。立場の違いを感じました。
 そうそう、占領地を視察する林芙美子や水木洋子らを
対比したりして、「(日本史を)既存の国境から解放され
た、東アジアという時空間に開く」(中国化!)という意
図に限っては、いい線まで行っていたと思います。
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