著者の白石教授は高名なインドネシア学者ですが、東南アジアを中心とする地域形成史や秩序構造の仕組みについても一家言ある方です。
本書では、冷戦後におけるアメリカ中心の国際秩序が何を本質的な要素とし、何を目指し、そして何が妨げになっているかを考察するとともに、そうした大きな枠組みを前提としつつ、東アジアにおける最近の政治的・社会的変化が地域的秩序の変容につながっていく可能性を示唆しています。また、そうした国際的・地域的な変動の中、我が国にとっての行動の余地が如何ほどであるかを冷静に分析しています。
「帝国」論がハナザカリの今日この頃、本書でも、今日のアメリカ的普遍主義を古典的帝国による「教化」のアナロジーで説明し、一部のイスラム運動などを対象とする「テロとの戦い」等を「帝国」による「化外の民」の討伐として描いて見せています。そうした説明振りを「なるほど」とすべきか否かは、皆さん自身が本書の主張をじっくり読んだ上で判断してみてください。
本書は、脚注などを付さない一般向けエッセイといった体裁の小さな本ですが、読んでみて、国際秩序の本質とは何か、国民国家の存在意義はどこにあるのか、東アジア的アイデンティティは確立可能なのか、などなど、ついつい小難しいことを考えさせられてしまう一冊でした。