◎ 内 容
最近、「コミュニティ」や「居場所」は、
若者や生きづらさを抱えた人を救う万能薬のように
語られることが多い。
しかし、それは本当なのか。
本書は、「世界平和」や「夢」をかかげたクルーズ船・
ピースボートに乗り込んだ東大の院生による、
社会学的調査・分析の報告である。
なんらかの夢や希望をもって乗り込んだはずの船内で、
繰り広げられる驚きの光景。それは、日本社会の
ある部分を誇張した縮図であった。
希望がないようでいて、実は「夢をあきらめさせてくれない」社会で、
最後には「若者に夢をあきらめさせろ!」とまで言うようになった著者は、
何を見、何を感じたのか。
若者の「貧しさ」と「寂しさ」への処方箋としてもちあげられる
「承認の共同体」の可能性と限界を探っていく。
解説と反論、本田由紀。
◎ 本 文 より
「怒る老人、泣く若者......。」
ピースボートをただの観光クルーズ船だと思ったら大間違いだ。
僕が乗り合わせたクルーズはエンジンが壊れたり、
船体に穴が空きアメリカ湾岸警備隊に拿捕されたり、
それに怒った年配者たちが集会を開いたり、
それを見て若者たちが泣いたり、本当に色々なことがあった。
それをただ記述して最近流行の「ルポ」にしても、
それなりに面白い内容になったと思う。
しかし、それだけでは勿体ないと思った。
それは、ピースボートが日本社会のある部分を濃縮したような
空間だと感じたからだ。
ピースボートを通して見えてくるもの。
それは、今を生きる若者の問題、不安定雇用の問題、
組織の問題、旅の問題、自分探しの問題と様々だ。
僕は特に「コミュニティ」と「あきらめ」というキーワードと共に
ピースボートを考えてみたいと思った。(「はじめに」より)
◎ 目 次
はじめに
1章 壊れた日本、希望は共同体?
2章 旅の終焉と新しい団体旅行
3章 ピースボートの秘密
4章 自分探しの幽霊船に乗る若者たち
5章 ルポ・ピースボート
6章 あきらめの舟
7章 だからあなたはあきらめて
あとがき
解説、というか反論......本田由紀
◎ 著者プロフィール
古市憲寿(ふるいちのりとし)
1985年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。
現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程。
慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。
有限会社ゼント執行役。専攻は社会学。
大学院で若者とコミュニティについての研究を進める傍ら、
コンサルティング会社でマーケティング、IT戦略立案等に関わる。
本田由紀(ほんだゆき)
1964年生まれ。社会学者。東京大学大学院教育学研究科教授。
著書に『若者と仕事』(東京大学出版会)、『多元化する「能力」と日本社会』
(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞受賞)、
『「ニート」って言うな!』(共著、光文社新書)、
『教育の職業的意義』(ちくま新書)などがある。
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99 人中、73人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
釈然としない「ピースボートの社会」論,
By
レビュー対象商品: 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) (新書)
ピースボートという共同体を、乗船者はどうくぐり抜けていくのかを検討した社会論。素材はいいと思うのだが、私にはなんか釈然と来ないものがあった。帯にあるように、ピースボートが社会変革のような理想を植え込む装置ではなく、実はその逆、あきらめの装置ではないかと著者はいう。しかし、解説で本田由紀が述べるように「なんでそうなるか」や乗船者を「セカイ型」「文化祭型」などの分類をどうしているのか、うまく説明しきれていない。そこがしっかりないと、「共同体が目的性をクールダウンさせてしまう」という、ピースボートを通して見出されるべき、今どきの若者論、社会論が生まれないのではないか。政治への関与について、本田のように「あきらめてはいけない」か、古市のような「諦める方が幸せ」かという二分論もよくわからない。年齢にもよるが、貧しくても本人が充足していればコミットしないし、必要と感じだしたらまたする、それだけじゃないかと思う。 また、小熊英二、北田暁大、鈴木謙介などなど批評家や学者の名前が巻頭を中心に散りばめられているが、自分のものとして消化しきれていないんじゃないかという感じもする。そもそも、社会論という一見広そうだが思想オタクが絡み付いて実効性に乏しいこの手の議論に、自分の興味がないだけかも知れないが。文章が面白くなることを意識してか、論者の名前に「イケメンの」などの枕詞が付されているが、蛇足に蛇足を重ねている感じがした。 現代社会論の思想やら細かいデータ分析を抜きにして、乗船記、乗船者のインタビューに絞って書いた方が良かったような気もする。本書を通したピースボートから社会はあまり俯瞰できない。☆を2つつけたのは、読者と古市をつなごうとする本田のファシリテーターとしての力量、若い書き手、論者を育てようとする意気をよしと感じたものによる。ただ、25歳でこれだけ書けたら、将来の期待はある。
39 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ピースボート、楽しかったですよ。,
By 山川紘矢 (東京都町田市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) (新書)
家内が買ってきてくれたので、読んでみました。それなりに面白かったです。 若い考え方ですね。 僕は41回で世界一周、64回で南廻りを半周しました。 2回も行ったのは41回が良かったからです。トラブルもなく老若なかよくやってました。 64回に載ったら、ピースボートに事務局が良くなかった。奉仕をする気持ちはなく、自分たちがめだとうと していました。食事もわるくなり、若者と老人組が分離していました。 乗る船によって、雰囲気などちがうのではないでしょうか。 ピースボートに関するいい本が出ていないので、貴重な本を書いてくださったと思います。 ちょっとネガティヴすぎるかな。いい若者もいましたし、チャンスをどう生かすかは個人の問題ですね。 41回は本当に良かったです。この筆者は63回だそうですね。大変な事件もあったそうで、それなりに 大変でもあり、楽しくもあったのではないでしょうか。
43 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ポジティブな意味であきらめるって新鮮かも。,
By ハッピー (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) (新書)
本屋でタイトルが印象的で手に取りました。私は20代半ばですが、ピースボートに特に興味はありません。 でも母親が街のいたるところで貼られているポスターをみるたびにあたしも世界一周行ってみたいわーと 言ってたのと、オビの「現代に必要なのは”あきらめ”だ!?」というキャッチに興味がわき、思わず買って しまいました。 ピースボードの(かなり斜に構えた?)体験記だったり、あっと驚くタダで世界一周行けちゃう裏技が知れ たり、乗船者の実態を分析したり、いろいろ書いてあるけどすいすい読みとおしてしまいました。 でも、「解説、というか反論」で本田由紀が書いているように、決して適当でも軽くもない。タッチが軽い だけで、しっかり考えてるし、データもとってるし、実際にピースボート乗ってるし、いい感じです。なん だか信頼できる、気がします。 最後の2ページの「東大院生のまとめたきれいじゃないノート」に思わず爆笑。 修士論文を“跡形もなく”改変したそうなので、もとは難渋な文章なのかもだけど、こうゆうふうにわかりや すい言葉を使っておもしろく伝えることができるのっていいなと同年代の男子としてうらやましく思えました。
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