この窮屈な時代の閉塞感を打ち破るにはどうしたらいいのだろうか。「希望」という言葉など、もう死語ではないかと思っていたが、アートプロデューサーである著者の見る美術からは、「希望」というほかない思想が沸き上がってくる。かつて、美術が人間の生活を豊かにしようと志向した時代があり、それが希望でもあった。そして美術はいま、「わずかな力を振り絞って、人間と自然とをつなぎ、また隔てられた人と人をつなごうとしているのではないか」と、著者は投げかける。「美術を思うことで、人間社会や環境がもつ貧しさや狭さを、いつでも超えていることができた」といった、著者の体から沸き上がってきたひとつひとつの言葉には、思わず涙が出る。巻末には、膨大な年表もついていて、戦後文化史を学ぶにも有効な資料だ。