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市民科学者として生きる (岩波新書)
 
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市民科学者として生きる (岩波新書) [新書]

高木 仁三郎
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

日経ビジネス

反原発に立つ 原子力の専門家が 問う専門家の責任
著者の高木仁三郎氏については、かねて関心を持っていた。チェルノブイリの事故で原発の安全性について関心が高まったころ、氏はテレビの討論番組に反原発の立場でよく出ていた。肩書は原子力資料情報室代表(現理事)とあるだけで、原子力発電という巨大な国家プロジェクトに対して、どんな政党にも機関にも頼らず、在野の一科学者ということだった。

一体どういう人だろうと長らく疑問を抱いていた。氏は東大で核化学を専攻した後、日本の原子力開発の創成期に日本原子力事業(後に東芝に吸収された)で原子炉で生成される放射性物質の研究に取り組み、その後東大原子核研究所に転じて宇宙核化学の研究で成果を出し、1969年30歳で都立大の助教授にスカウトされた人物だった。俗な言い方をすれば、この時点で学会での将来は保証されていたと言っていいだろう。

だが、高木氏はドイツに留学してやりかけた研究の決着をつけると、慰留を振り切って73年に都立大を退職してしまう。なぜか。それが、本書に書いてあるわけだが、一口で言うと科学者の責任ということだろう。責任と言っても、家族に対する責任、給料をくれる会社や組織に対する責任、 社会人としての責任といろいろあるが、この場合は専門知識を持った者の責任と言ったらいいだろうか。

もし医者が、売り上げが上がるからと必要もない手術をし、必要もないクスリを投与したとすると、病院経営者としては責任を果たしているが、本来の医者としての責任を果たしているとは言えない。同じことが企業内で、研究機関でさまざまな研究開発、巨大プロジェクトを遂行している専門家たちにも言えるのではないか。会計士、法律家 、経営者、エコノミスト、ジャーナリストなどにも言えることだが、原子力や遺伝子などの地球規模でしかも何世代にもわたって深刻な影響を及ぼす分野の研究者の責任は、重さが違う。

本書には、高木氏が自分の道を突き進もうとして、壁にブチ当たっては煩悶したさまが赤裸々に語られている。暗澹たる気持ちにさせる組織的な嫌がらせや、昨年夏発病したガンとの闘い、そこから得た新たな心境についても語られている。しかし全編を通じて、群馬県の前橋で過ごした少年時代のちょっと反抗的でやんちゃな高木少年の面影がこだましている感じで、けっして暗い印象はない。こんな時代にこういう人物がいるのが、不思議である。いや、こんな時代だからこそ、出てきたのだろう。

(ジャーナリスト 野口 均)
(日経ビジネス1999/10/11号 Copyright©日経BP社.All rights reserved.)

出版社/著者からの内容紹介

専門性を持った科学者が,狭いアカデミズムの枠を超え,市民の立場で行動することは可能なのか.長年にわたって核問題に取り組み,反原発運動に大きな影響を与えてきた著者が,自分史を振り返りつつ,自立した科学者として生きることの意味を問い,未来への希望に基づいた「市民の科学」のあり方を探る.

登録情報

  • 新書: 260ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1999/9/20)
  • ISBN-10: 4004306310
  • ISBN-13: 978-4004306313
  • 発売日: 1999/9/20
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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形式:新書
高木仁三郎という人は、核化学が専門で、もともと原子力を研究する立場にあった人である。人生に疑問を抱かなければ、原子力資料情報室などという民間機関の代表ではなく、どこかの大学の偉い先生になっていただろう。

原発がまた事故を起こした、とニュースで流れると、必ずメディアがコメントをとりに行くのがこの「原子力資料情報室」である。ここには、長年高木が集積してきた原子力関係の事故記録や、政府にとって都合の悪い発電効率に関するデータなどが山積されているからである。
原子力メジャーが、一番つぶしたいと思っているのがこのNGOだろう。

さて、高木はなぜアカデミズムでの立場を捨てて在野の「情報公開者」となったのだろうか。
この本によると、それは核研究者である高木自身が、核についてわからない部分が多すぎる、という大きな疑問を持ったことによるという。
その例として、若い頃に扱った核物質、ポロニウムの話が出てくるのだが、ふたをしてあるのに知らない間に外部に漏洩する、というこの物質に高木が感じた本能的な恐怖は、一般的な無機化学しか学習していない私にもリアルに伝わってくる。

原子力発電所の中核部はサーマルリアクター「熱核反応炉」と呼ばれる。高木は、この中でもどのような反応が実際に起こっているのか把握できていない、と述べる。とすると、私達は、中で何が起こり、出来ているのかもろくすっぽわかっていない発電所に生活を預けているわけである。
とりあえず電力が得られれば結果オーライ、途中経過はどうでもいいじゃないの、という思考停止が、核関係の科学者の間にすら蔓延しているという現実、そしてエコの波にのり、CO2を出さないクリーンなエネルギー、というウソを撒き散らして世界に原発をばら撒こうという現在の恐るべき状況を、高木はあの世でどのように感じているのだろうか。

原子力メジャーに対し何もできない個人に過ぎない自分自身が無念である。
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52 人中、49人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 相楽
形式:新書
2000年10月に亡くなるまで、長らく脱原発運動の中心的人物の一人だったという高木仁三郎の自伝的エッセイ。
一読、「フェアな人だったのだな」と思う。

本の性格上、個々の活動や運動の詳細の描写は少ないが、一貫して"当然に悪である政府や電力会社への抗議や実力行使"などでなく、"独自にデータを収集、解析し実態と異なる政府や学界、電力会社の発表がされていたことを明らかにし、認めさせる"姿勢だったことが分かる。

また、「原子力問題をやっていると、 原子力賛成・反対を唯一の基準に、人の価値を評価したり、運動を評価したりする人に多く出会う。推進側・反対側双方にそういう面がある(中略)そのような「唯原発主義」のようなものを、私は好まない」(p216)といった言葉や、推進派として政府の委員なども務めるかつての研究仲間との対話のエピソード(p208-209)も興味深い。

1938年に生まれ、東大理学部入学(1957)⇒日本原子力事業入社(1961)⇒東大原子核研究所助手(1965)⇒都立大学助教授(1969)⇒脱原発市民運動家/科学者という足跡は、学生運動を含む60年安保の反対闘争、日本の原発黎明期、市民運動の高まり等といった時代の歩みとも深く重なるが、だからこそイデオロギーの嵐が吹き荒れた激動の時勢の中での、科学的でフェアな姿勢な貫徹に驚かされる。
優れた成果のみならず、その理性的な姿勢がライト・ライブリフッド賞受賞等、推進派すら一目置いたという高い評価に繋がったのだろう。
死を目前にしながら、陰謀論も反対派への罵倒や憎しみも排された筆致も見事。
他の著書も読み進めてみたいと思う。

ただ、高木仁三郎氏亡き後、そのフェアな志を引き継いだといえる後進は誰なのだろう?
2011年3月11日の震災後における、氏が初代代表を務めた「原子力資料情報室(CNIC)」の活動などは、活発な中継を見る限り、氏が明確に戒めた推進派・反対派の二分法や"まず結論ありき"の煽動じみた政府や電力会社批判に寄り過ぎているように見え、とても残念に思えてしまう。

一方で、本作品の中でそのフェアで科学的な高木氏が怒りを顕わにしているのは、各地の現地活動家による原発反対運動が無知で感情的な反発や、欲得ずくの「地域エゴ」と片付けられがちであったことで、浪江小高原発反対運動の福島県浪江町棚塩の舛倉(隆)氏、元六ヶ所村村長寺下力三郎などの名を上げつつ「彼らは、実によく勉強していた。彼らを「地域エゴ」となじる、東京から来たなまじの「専門家」などに比べたら、原発の構造からあるべきエネルギー政策についてまで、よく学び、立派な見識をもっていたのである」(p203)と言明していることも、感想として記しておきたい。
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14 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
市民科学者 2011/4/17
By hanaohanao トップ1000レビュアー
形式:新書
 高木さんの本を10年ぶりに読み直してみた。大事故はもう起こらないと高をくくっていた自分を恥じる。環境運動、反公害運動、反原子力運動は、とにかく政治性が強く、素朴に健康に安心して生活したいという人々の気持ちから乖離しがちだった。高木さんは、大学や企業あるいは政府から距離をとり、あくまで市民に寄り添う科学者たらんとされていた。今回のフクシマでも、彼が設立した原子力資料情報室は大きな力を発揮したが、内包する政治性からなのか、その情報発信はバイアスをもつと受け取られている。高木さんが、若干31歳で東京都立大に助教授として赴任され、ほどなくお辞めになった以降も、あえて何名かの学生が高木さんを慕って入学してきた。その一人、今も東北電力で働いているはずの知人はどんな気持ちで仕事をしているのか。きちんと耳を傾けていたつもりだった環境系研究者さえ、最近は反原発運動に関心を失っていたように感じる。後悔先に立たず。62歳と若くして亡くなったことが惜しまれる。
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