本書は、経済思想史を専門とし
現在は京都大学教授である著者が、
いわゆる「市場主義」経済学の盛衰を概説する著作です。
「市場主義」の代表的な論者フリードマンの学説を起点に、
彼に近い立場の学説や反対する学説
さらに彼の先駆者や後継者の学説をコンパクトに紹介しつつ
それらが社会情勢等に応じて
どのように変化していったのかが論じられます。
学説の検討という性質上、
記述も経済学の具体的な理論に及びますが
重要な事項については解説が付されているので、
読み難さを感じることはありません。
個人的には、圧倒的な少数説として主張されたマネタリズムが
徐々に賛同者を増やしていく様子は
「小が大を飲みこむ」的なおもしろさを感じたのですが、
同時に、ある学説がそれ自体の妥当性以外の要因によって、
「通説」になっていく「怖さ」も再認識しました。
本文やコラム等で紹介される経済学者個人のエピソードも興味深く
普段は無味乾燥と感じる経済学の理論も
こうした生きた人間が生み出したものだと思うと
少なからず、身近なものに思えてしまいます。
いわゆる「市場主義」の実態を伝えるとともに
それにまつわるさまざまな議論を平易に紹介する本書。
経済学、とくに、学説史に興味のある方はもちろん
経済に無関心でいられなくなった今日
一人でも多くの方に読んでいただければと思います。